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「周焔は家でキミを心配してるんだよー。いいから出て来ておくれよ。冰君ー?」
「ふん! 誰が出て行くかよ! 周焔の野郎、自分じゃ迎えにも来ねえってか!? しかも来たのは″二人″ってさー! あいつってば、″二人″も迎えによこすなんてマジでバッカじゃねえの!? あんたらも余計な節介焼いてねえでとっとと帰れよ! 俺はぜってえ帰ってなんかやんねえかんな!」
この返答で鐘崎らには冰を拘束している連中の人数が二人だということの見当がついた。冰が言った「二人」というところだけ重複しているし、そこだけが強調された喋り方だったからだ。
「敵は二人だな」
「ああ。冰は相変わらずに頭の回転が早い」
向こうが二人ならば押さえるのはそれほど苦ではない。ただし、冰は当然手脚の自由を奪われているだろうから油断は禁物だ。鐘崎らはもう一度呼び掛けてみることにした。
「冰君、そんなこと言わずに一緒に帰ろう。周焔も心配しているんだよ。キミに悪いことをしたって落ち込んでいてね。それで俺たち二人が迎えにやって来たというわけなんだ」
「そうだぞ、冰! あんま我が侭こいてっと、終いにゃ首に縄つけて引きずって帰るぞ!」
すると再び乱暴な返事が飛んできた。
「うっせー! あんたらもあんたらだ! 周焔なんかの為に上手く使われちゃってさ、こんな大雨の中わざわざ迎えにくるなんてバッカじゃねえの? いいから早く帰れよ! 俺を捕まえようったってそうはいかねえぞ! こっちに来たら舌噛んで死んでやるから!」
つまり側に来るな――という意味である。敵は確実に銃などの危険な武器を手にしていることを示している。ある程度近付いた段階でいきなり仕掛けてくるに違いない。紫月は日本刀に、鐘崎は銃に手をかけながら進んだ。
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