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一方、冰の方である。彼を捕らえている敵が今の返答の仕方に目を吊り上げていたのだ。
「馬鹿やろう! 誰があんな返事を返せと言った! ヤツらをこっちに誘き寄せなきゃ意味がねえと言ったろうが!」
銃口を突き付けながら小声で冰を脅す。だが、冰は開き直ったような態度でこう言ってのけた。
「ふん! 僕だってあの周焔にはいい加減腹が立っているんですよ。あいつの側にいると毎度毎度こんな目に遭わされるんだ! あなたたちもホントは知ってるんでしょ? 僕が今までにも拉致られたり危険な目に遭ってきたってこと!」
意外な言葉に男たちは怪訝そうに顔を見合わせている。構わずに冰は続けた。
「それにさ、迎えに来た二人だって極道者だ。どうせ僕の言い方に腹を立てて、こっちに捜しに寄って来るに決まってらぁな! そうすりゃあんたたちにとっても都合がいいわけでしょ?」
プイと、ふてくされたようにそっぽを向いて小さく舌打ちする。
「いいのか? あいつらは一応周焔のお仲間なんだろうが。こっちに来りゃ、俺たちに殺られちまうんだぜ?」
男が脅せども冰はまるで態度を変えなかった。
「知るもんか。どうせあいつらだって僕よりは周焔の肩を持つに決まってる。あんたらにどうされようが僕には関係ないね!」
好きにしてよと再びふてくされる。思っていたのとまるで違う展開に、男たちはすっかり警戒心を解かれたようだった。半ば呆れ顔で肩をすくめている。
こうなればシメたものだ。冰お得意の話術で敵を引っ張り込むタイミングは今と踏んだ。
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