山の彼方の昔話

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このところ日照りが続き、作物は干からびて実りがなさそうです。 女子どもは遠くの野山に出向いては、食べられそうな草や木の実を集め、男どもは魚を捕ったり、鳥や獣を捕らえようと励んでおりました。 今日も皆は集まって、わずかばかりの粥を分け合って、腹の虫をなだめておりました。 粥をすすりながら話すのは、どうすれば食べ物が手に入るか、そんな話しばかり。 「西の山には 果物やきのこがまだいくらか採れそうだぜ」 「西の山は、守り神様のおわす処じゃから、近づいちゃいけんといわれとるがな」 『神様のご馳走を盗み食いするようなマネをしたら、神様が怒ってしまいなさるぜ」 「しかし…何しろワシ等の日々の食い物がないんだぜ」 「わしゃ腹ペコじゃ」 「ワシ等を守ってくださる神様なら、許してくださるんでねえか?」 「守り神様にお許しをもらって、西の山の麓できのこや木の実を頂こうじゃないか」 「そうだ、そうだ、そうしよう!」 「けど、お許しを頂くには、何か捧げ物をせんといかんのとちがうか?」 「捧げ物に出来るような物は何もないのう…」 「若い娘を捧げると、神様が喜ぶって話しを聞いたことがあるが…」 「若い娘を捧げ物にするなど、とてもできることではないぞ」 「何しろ、わしらは小さな村じゃ。若い女には子どもを産んで貰わねばならんからのう」 「どうしたもんかねぇ」 相談の結果、とりあえず皆で雨乞い踊りを踊ることになりました。 僅かの粥はあっという間に食べ終わり、早速踊ってみることになりました。
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