山の彼方の昔話

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西の山の湖のほとりに行って、さあ、練習開始です。 木の根を叩いて、音に合わせて手を振り回すだけでしたが、それはなかなか楽しかったのです。 でも、さっき粥を食べたばかりだというのに、また腹が減ってしまいました。 空腹のためフラフラと目眩を起こした若い者が、ゴツゴツした木の根っこにつまずいて転んでしまいました。 その拍子に、木の根元の小さな(うろ)の中に不思議なものを見つけました。 手のひらに収まるほどの四角い板で、木でも鉄でもないようです。 とても綺麗な白色で、表面は固く、つるつるしています。 片面には上の方に鏡のような四角い窓があり、下半分には不思議な四角い突起がきちんと並んでいます。 しかも その四角い突起の部分には何やら不思議な記号が刻印されているのです。 「これはいったいなんでごじゃろうか?」 「なんだ、なんだ?」 「どうした、どうした?」 踊りをやめて皆集まってきました。 「こんなものを誰かが作ったのじゃろか?」 「こんなにすべすべに磨き上げるとは、どんな石を使ったのじゃろうな?」 いじくり回していると突然その窓のところに人らしきものの姿が浮かんできました! 人ではあるようですが、とても 異様な姿をしています。魔界からやってきた者かもしれません。 板は薄っぺらくて、てのひらの半分の厚みもない。だというのに、その異形の者の背後には、広くて宮殿のようにキラキラと輝く豪華な空間が広がっているのです。 おそるおそる手に取って、板を裏返してみても、ツルツルした板が見えるばかりです。 でも、窓から覗いて見ると、やはりずっと奥の方まで広がっています。 誰が見ても奥の部屋が見えると言うのですから、見間違いではないようです。 「あの男は、どうやってこの板の中にはいったのじゃろうか」 「どこかに入り口があるはずじゃが…」 「不思議なことがあるもんじゃのう」 皆で、表から裏から眺め回したり、突起をいじくったりしていたのですが‥‥‥
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