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――鬼。
血で染まったように赤くて筋骨隆々の巨体は、大人の身長を優に3倍は超えている。端的に言い表すとTHE・化け物。
この鬼畜生は、子ども達が健気に積み上げて完成間近に迫った石の山を見ては
「歪ンデル! 醜イ! 積ミ直セ!」
と理不尽に罵って、手に持つ鉄の棒で無慈悲にカチ壊す。
パワハラ上司やヤクザも真っ青の極悪非道な所業に、なけなしの希望も石山と共に儚く崩れ去るってもんだ。
それでも、アイツを前に抵抗しようなんて気は毛ほども起こらない。
何故なら、生物的な種としての本能が告げているからだ。
『あ、コレ絶対に倒せないやつだ』と。
例えるなら、バールのようなものを持った冬眠前のヒグマ。いや、そんな危険生物を相手にしても、きっと赤子の手をひねるが如く軽々と打ちのめすだろう。
言動以上に存在が理不尽そのもの。戦闘力を測る機械があったら秒でブッ壊れるに違いない。
ちなみに、鬼がいない間に三途の川を渡るのも不可能である。
子どもが三途の川に入ったら、途端に河の水は炎となって燃え上がるという謎のトンデモ仕様。苦しみ抜いた末に息絶えて、じきに息を吹き返してリスタートって流れだ。
ああ何とも嬉しくない死に戻りスキルかな。
生前に爺ちゃんから聞いた話では、賽の河原にいる子ども達は、最終的に地蔵菩薩の出現によって無事に成仏できるらしい。
厳ついオッサンの裁判をスルー出来るのは、ここで繰り返される苦行の日々が、地獄で受ける罰にも匹敵するからだろう。
だが、俺は周りの子ども達のように、血だらけになるまでクソゲーを続けるのは嫌だ。成仏を待たずして、リアル廃人になりかねん。
そもそも、そんな都合よくやって来る救世主が果たして本当にいるだろうか? いや、いない(反語)。
この惨状を見ても助けに来ない菩薩とか、ある意味もう悟り開いちゃってんじゃないの? ダークサイドに堕ちた釈迦かな?
俺は鬼と相対することも河を強行突破することもなく、かつ助けを待たず早急に現状を打破してやる……っ!
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