子ども達の煉獄 -the Children's Limbo-

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 「ハイ、皆ちょっと集合~~~~!」  鬼が石の山を一通りデストロイして立ち去った後、俺は声を上げて子ども達に招集をかけた。  不審がられるかとも思ったが、皆もう疲労と絶望で完全に思考停止しているのだろう。1人また1人と手を止めて、のそりのそりと俺の周りに集まってきた。  ひーふーみー……うん、大体20人弱といったところか、十分だな。  案の定というか、誰一人として目に生気が宿っていないけど、これから行う作戦に全く支障は無い。  むしろ、俺に反発する気力や異を唱える思考力が失われていて、指示通りに動く駒として都合が良いというものだ。言い方は悪いけど。  「なぁ皆、いい加減このクソみてぇな現状を変えたくないか? 俺に考えがあるんだ。いっちょ鬼に一泡吹かせてやろうぜ!」  作戦は非常にシンプルで分かりやすい。  皆で協力して石を1ヵ所に集める、以上。  正直、子どもでも思いつくアイデアだ。だって子どもだもん。  タイミングだって何も難しくはなく、次に鬼が石の山を壊して姿を消した後、一斉に開始する。  鬼は1体しか目撃されていないし、やって来る頻度は1時間に1回とのこと。  この人数で力を合わせて積めば、10分もかからず余裕で完成させられる筈だ。数の利って素晴らしい。  ただ、1つだけ懸念点がある。  仏塔を模した石の山を作ったこの功徳、つまり功績は誰のものになるのか?  最後に石を積んだ1人だけ? それとも皆に分配される?  こればっかりは、実際にやってみないと分からないな。  非常に後味は良くないけれど、個人的には前者の方が望ましいから、ワンチャンにかけて最後の石は俺が積むことにしよう。  他の子ども達を利用する形になるが……まぁそれは仕方ない。うん。  このまま終わりなき苦行のスパイラルに陥るとか、まっぴら御免だからな。
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