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「…………よし、鬼は行ったな。じゃあ皆、始めるぞ!」
子ども達に作戦を伝えた後、テキトーに小石の山を積んで1時間が経つと、私が来たと言わんばかりに鬼が現れて安定のデストロイ。
そして再び立ち去っていく、そう、この時が訪れるのを待っていた。
流石に、あの威圧オーラ全開な鬼を欺くなどという重大イベントを、ポッと出の奴が提案して即実行ってわけにもいかないからな。
いかに絶望の淵でゾンビ状態になっている子ども達といえど、多少の猶予と心の準備くらいは必要だったに違いない。
それにしても、壊されるのが分かっている物を作る虚しさというのは、壊されることに対する怒りをも凌駕するんだな。
こんな感情が重労働の中で何日も続いたら、そりゃ死んだ魚のような眼にもなるってもんだ。
俺はまだ2回目、それも全く以って真面目に積んでなかったんだけど、もう既にメンタル病みそうだよ。
まぁ、これ以上するつもりは毛頭ないが。
――5分経過――
「これは……イケる、イケるぞ!」
このペースなら、本当に10分とかからず積み終わるだろう。
フハハッ! いかに鬼と言えども無力なものだな、集団という圧倒的な物量を相手にしては。まぁ実際に戦ったら瞬殺されるだろうけど。
どうやら俺は、争いで絶対に負けない最大の秘訣というものに、この歳にして気づいてしまったようだ。
今なら小さい石の山と言わず、大国の1つも築けそうだよ。
ハイル・俺。yраааааааа!
――――ドスッ! ドスッ!
「…………ん?」
アドレナリンっぽい成分で妙なテンションになっている中、遠くから何やら重厚な衝撃音が聞こえてきた。
というか、だんだんと近づいてるような……?
音がする方向に目を凝らすと、異様な禍々しさを漂わせる気配が次第に大きくなっているのを感じる。
まさか、いや間違いない。あれは――――。
「お、鬼!?」
な、何で? Why?
これまでは1時間のインターバルで来ていたのに、今回に限って5分でカムバックとか、河原でカップ麺でも作ってましたっけ。
もしかして、バレたのか?
でも、どうして――――。
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