15人が本棚に入れています
本棚に追加
ガッシャーーーーン!
………………は?
ほんの一瞬前まで山の形を成していたモノが、瞬きする間にバラバラと崩れて散っていく。
ガラガラガラッーーーー
なにこれ、デジャヴ?
し、しかし、ここまで鬼が辿り着くのに、まだ僅かながら時間はあった筈だ。
「な、何が…………?」
「――――ホッホッホッ。いけませんねぇ、ズルは」
無残にも地面へと転がった石から視線を上に戻すと、目の前には細身の坊さんが立っていた。
袈裟を身にまとい、右手には錫杖、左手には
「えっ…………まさか、地蔵菩さ――――」
ドローンのリモコンを持っている。
「いや、お前かーーーーい!」
待って待って、情報量が多過ぎて思考が追いつかない。
地蔵菩薩は子どもを成仏させる存在で、だけどドローンで監視していて、石の山をデストロイした。
うん、整理しても分からん。どゆこと?
もう何なの、このラスボス感を漂わせてる菩薩は。お前そっち側のキャラちゃうやろ。マジで闇堕ちしてたのか。
理解不能な状況だが、1つだけ確実に分かることがある。
これはもう詰んだ、ということだ。
あと一歩のところで、積めなくて詰んだ。
ハハッ、つまんねぇダジャレ。
もう完全に諦めた俺を横目に、菩薩は鬼に蹴散らされた子ども達の傍へと近づいていく。
「うんうん。あなた達は皆、もう十分に頑張りました」
そう口にして静かに手をかざすと、子ども達は眩い光に包まれる。
あれっ? もしかして、これは…………。
しばらくすると、子ども達は薄れゆく光と共に、音もなく姿を消した。
「イッツ成仏タイムか!」
なぁ~んだ、助けてくれるんじゃん。
石の山を崩された時は驚かされたけど、それも含めて鬼と菩薩のドッキリってわけね。案外お茶目さんかよ。
ドローンで撮影までしちゃって、性格悪いなぁ~もう。
…………いや、ホントに。良かった、ヨカッタ。
拭い切れない不安を抱く俺の前に、菩薩は鬼を伴いながら歩み寄った。
次は俺の番……だよね? ねっ?
ほら、パァーーっと成仏させてくr――――
「いや、君は全然、まだまだですよ」
キッパリと菩薩が言い放った直後、鬼がバールのようなものを高々と振り上げる。
「ハハッ……ですよねーー」
ドスッッッ!!
真っ赤に染まる視界の中、この1日で得られた教訓が脳裏をよぎる。
――親より先に死ぬな。
――地道に頑張れ。
――菩薩は敵。
それと、もう1つ。
――尖った部分で殴られると、死ぬほど痛い。
最初のコメントを投稿しよう!