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炎上
「チッ」
自然に舌が動いた
また、誹謗中傷かよ……DM封鎖したってのに、メールアドレスまでくんなよ
【登録者250万人越えのyoutuber「なう」が炎上した理由をまとめてみた!】
うざ...俺のことはもうほっといてくれよ。
そう思い動画投稿サイトyoutubeのサイトを開く
今の登録者は...200万人、一日で50万人も減ったってわけかよ。
ここまで来るのに5年かかったんだ、俺の人生何だったんだよ。
机を叩くがただこぶしが痛くなるだけだった。
「うぅ...あぁ」
まるで赤ん坊のようだ、わっかているさ、何も現実は変わらない
そう、現実は何も変わらない。
そうだ、現実は変わらないがネットなら...
そう思いもう一つのアカウントでつぶやく
「つらい 誰か助けて」
『どうしたの?話聞くよ?』
そうリプライがついた
「つらいことがあって」
『うんうん、お金のこと?』
「それもあるけど...」
『お金のことなら役に立てるよ。』
『お話聞かせて?』
「ありがとうございます。いろいろあって収入源がなくなってしまいそうで....」
『そんなことより、過去ツイ見たけど君男?』
「そうですね。男です」
『男に興味はないよ。』
「は?」
思わず声が出てしまった。なんだよそれ、ネカマでもしろってか?
てかヤリモクかよ、きしょ
「つらい、消えたい」
ベルのうえに1と表示された。
『男のくせに、きしょw』
これまで誹謗中傷はたくさんされてきた、だから、だから、慣れてるはずなんだ。
こんなこと、どうってこと....
視界がぼやける。俺が、女だったら....
気づいたとき俺は うな というアカウントを作っていた。
俺は女としてのアカウントを作っていたのだ。
「たすけて、つらい」
『大丈夫?話聞くよ。』
『うなちゃん、可哀想。なにかあったの?』
すこしは満たされる気がしたんだ
「だれか、うなのこと愛してよ」
ばかみたいだってわかっている。
『君のこと愛してあげる』
一件のDMがきた。
初期アイコン、名前は♰、明らかに怪しいアカウントだ、だけど今はもう、どうでもいいんだ。
「愛してくれるの?」
『うん、愛すよ』
「えへへ、うれしい。」
『かわいいね、自己紹介でもしようか』
「うな、16歳、高校一年生です。好きなことはyoutubeみること」。
『俺は28歳、こはくって呼んでね。俺もyoutube好き、なうって知ってる?』
28歳、俺と同い年かよ。働けニート
そう嘲笑ったが、虚しくなりやめた。おれは年齢も性別もうそついてんだしな
はあっと無意識にため息をついてしまった。
でもそんなことはどうでもよかった。「なう」という文字が見えたのだから
「なうって今炎上中の?そのなうなら知ってるよ。」
『そう、そのなう、炎上しちゃったけどなうのこと好きなんだよね!』
「なうのどこが好きなの?あんな人の、どこがいいの?」
無意識に手が動いていた。まだ俺のこと好きな人間がいたなんて信じられなかったからだ。
『炎上しちゃったけどトークおもしろいし声もいいし周りのことちゃんと見えてて好きだな。三年前握手会に一回行ったことがあるんだけど対応がすごく良くてさ。』
『なんであんなことしたのかわかんないよ、あの炎上は誰かが仕組んだことだと思う。』
「そうなんだ、こはくはなうのことすごい好きなんだね。」
そうだ、あの炎上は仕組まれたものだ、そう自分に言い聞かせる。
自業自得なんていつからか俺の辞書からは消えってしまっていた。
全部全部あいつらが、悪いんだよ。
『うん、すごいすき、うなちゃんは好きなyoutuberとかいないの?』
この人なら、俺のこともっと好きって言ってくれるかな。
「実は私もなうのこと好きなんだ。ずっと昔から見てる。」
『いっしょだね、うなちゃんと共通点見つかってうれしい』
「わたしもうれしい」
『早く、復活してほしいな』
「それな、ところでなんだけど、今度通話しない?」
この人なら、こはくなら今の俺だって、「なう」じゃない俺だって受け止めてくれる。そんな気がしたんだ。
俺のこと、本当に愛してくれるのか?
もちろんはじめは一時しのぎで本気なんかじゃなかった、だけど
本当の俺を愛してくれるような気がしたから
『いいよ、しよっか』
自然に口角が上がっていた。どんなおれも好きでいてくれる。こはくなら、きっと、愛して受け止めてくれるはずだ
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