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試合終了後、真彩は女子高校生クイーンとなったことで囲み取材を受けていた。取材記者は「気になること」があり、尋ねる。対戦相手の歩美も気になっていたために、囲み取材の輪の中に強引に入り込む。
「最後、運命戦になりましたが…… どうして相手の陣の札を取りに行ったのですか? まだ一文字目しか詠まれてないのに」
真彩はバツの悪そうな笑みを浮かべながら述べた。
「もう、負けてもいいかなって思ってました。『あ』から始まる十六枚札も残り僅かだったし、『あ』の一文字が聞こえた時点で運任せで山を張って何も考えずに歩美さんの陣に手伸ばしちゃいました。運が良かっただけです」
あたしは『あ』から始まる十六枚札が残り僅かであることすら気がついていなかった。フェイントを仕掛けて勝ちを拾おうとしたりと余裕がなかった。そして、最後は運頼みで手を伸ばしての勝利。真彩との実力と精神と運の違いを叩きつけられた歩美は、涙がこぼれないように天を仰ぎながら深い溜息を吐いてしまう。
「人間、運の良さで決まるってことね。その運を引き寄せるために山を張る勇気も必要ってことか……」
この敗北は歩美は一つだけ大人にさせるのであった。
おわり
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