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〈あ……〉
スパァン!
詠み手が一文字を発声するかしないかの刹那、真彩の手が動く。突き手で放たれた和装の袖の残像が翼に見える。
翼、その先端に覆われた敵陣の札は〈よしののさとに ふれるしらゆき〉歩美は運命戦なのにあたしの陣に手を伸ばしてきた!? と呆然とするばかり。あまりの出来事を前に反射運動で敵陣に手を伸ばすことすらも忘却させてしまう。
詠み手は最後まで詠を詠み上げる。
〈あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき〉
真彩の勝ちである。歩美は何が起こったか分からずに呆然とするも、すぐに自分が負けたということだけは理解し、真彩への礼・審判への礼・詠み手への礼を行うのであった……
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