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「キャーッ! 京極くん〜!」
「実力テスト1位おめでとう!」
「ありがとう」
駆け寄ってきたファンの女の子に爽やかに微笑み、お礼を告げる京極くん。
艶やかな栗色の髪に、黒目がちな大きな瞳。スっと高い鼻と、形のいい薄い唇。
京極くんは彫刻のようにキレイな顔をしていて、いつ見ても本当にかっこいい。
周りにいる女子たち同様、物語の中から飛び出してきた“王子様”のような彼に、私も自然と目を奪われる。
眉目秀麗で頭脳明晰。家柄も申し分ない彼は、男女問わずこの学園みんなの憧れの存在。
もちろん、私も京極くんに密かに憧れている一人。
去年の入学式の新入生代表の挨拶で初めて京極くんを目にしたとき、堂々とした立ち振る舞いと爽やかな笑顔に、一瞬で心を奪われてしまった。
それ以来私は、京極くんのことが気になっているけれど。
これはあくまでも、テレビ画面越しにイケメンアイドルや俳優を見る感覚に似たものだと思っている。
だって、大財閥の御曹司である彼に庶民の私が近づくなんてありえないから。
「京極くーん」
「蒼生くん。今日の放課後、良かったら一緒にお茶でもしない?」
いま京極くんの周りにいるのは、財閥や名家の綺麗なご令嬢ばかり。
だから、こうして京極くんを遠くから見ているのがきっと私にはしょうに合ってる。
おそらくこの先も変わらず、このまま彼のことをただ見ているだけの日々が続くのだろう。
このときの私はそう思っていた──。
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