まさかの出来事

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まさかの出来事

「夢さんって、どこから来たの?」 「えっえっと。ふ、福岡だよ」と夢は焦った感じで答えた。 「福岡か、遠いね。福岡といえば...」 「福岡といえば確かラーメンとか明太子だった気がする」と夢と戒斗が楽しそうに話しているうちに美術室についた。 「ここが美術室だよ。先生は、高杉 三月(たかすぎ みつき)先生だよ。」と戒斗が教えてくれた。 ー キーンコーンカーンコーン 一時間目の授業の始まりのチャイムが鳴り高杉先生はいつものように挨拶をし出席確認をした。 「今日はこの石像を絵の具で描いてもらいます。時間は一時間。好きな角度で描いてもいいですよ。頑張って描いてください。では開始。」と先生の合図でクラスの皆が石像を描き始めた。 夢はちょっと難しいななめ方向で書き始めた。 なんだ、絵の具で描くだけか、絵を描くの得意だから、大丈夫な気がする。難しいけど頑張ろうと夢は思った。 戒斗は、夢と同じななめの角度で石像の絵を描き始めた。 「夢さん上手だね。絵を描くの得意なの。」と戒斗は夢に聞いた。 「うん、絵を描くのは好きだよ。よく皆に上手いねって言われても、自分では、まだまだ上手くかけるって思ってるんだ。」と夢は微笑みながら言った。 「そうなんだ。夢さんって意外と頑張り屋さんなんだね。」 「意外とって何よ。」と夢と戒斗は楽しそうに話して描いていた。 夢と戒斗が楽しそうに話しているのをときやと他の男子は、 「あいつら初日でめちゃくちゃ仲いいじゃん。」 「俺も話したいけど、授業に集中しないと、高杉先生に怒られるから後で話しかけようぜ。」と、ときやたちは話していた。 セミが外で鳴いていて、トンボも飛んでいる。外の気温は二八度で暑い。夢の石像の絵はそろそろ完成する。戒斗も夢と同じペースで描いているから完成する寸前。 ときやたちはあまり上手く描けていない。こんな暑い中で外の石像を描くのは辛い。絵を描き終わった人から美術室に戻ってもいい事になっている。 「終わった。戒斗くんはどう?」 「俺も終わったよ、って夢さん上手過ぎない」 「えへへ、そういう戒斗くんも上手!」と夢は笑顔で言った。 すると、夢の目に写ったのは、熱くてつらそうにしている、ときやたちだ。夢はときやたちのそばに行き、笑顔で話しかけた。その笑顔はまるでこの暑い夏なんか余裕そうな顔だった。 「やっほ、教室ぶりだね。大変そうだったけど大丈夫?」 「えっ?あぁ、いや全然大丈夫じゃないよ。絵だって上手く描けないし。夢は終わったの?」 「うん、終わったよほら」と夢は自分が描いた 石像の絵を見せた。頭の大きさ、体のバランス、全体的にきれいに仕上がっていた。それを見たときやたちはびっくりした。 「え〜!夢絵上手すぎだろ、プロ級だぞ!」 「まじでやばいじゃん」とトキヤの横に座っていた中岡(なかおか)れいが言った。 「皆静かに、じゃあさ、絵を上手く描くコツを教えてあげるからさ、早く終わらせて皆で戻ろ。」と夢は言ってコツを教えた。 「頭の形をよく見る。そしてバランスに気をつける。頭の形を思い出して、体を描くといいよ」と詳しく簡単に説明している夢。説明通り絵を描いたときやたちは嬉しそうに終わったと騒いだ。 「夢のおかげで上手く描けたよ。サンキュー」とれいが言った。 皆で楽しく話しながら美術室に戻って、完成した作品を皆に見せるという鑑賞する時間だ。 鑑賞する時間、突然池見が、夢の作品に黒のペンキをかけて、作品を台無しにした。 「あ〜ごめん。足が滑ってペンキが夢ちゃんの作品にかかっちゃった。」と池見がわざとらしい感じで謝った。 「おい、足が滑ったとかじゃないだろ。わざとだろ」と周りの男子が言った。 だが池見がわざとペンキをかけたということを認めていない。夢の作品が台無しになったことに先生が気づいた。先生は犯人は必ずこのクラスの中にいるということを知っている。クラスの女子は夢のそばに寄って心配した。 「あぁ〜黒のペンキ服にもついちゃったね。洗いに行く?」とクラスの中で元気で優しい性格の胡桃沢 春菜(くるみざわ はるな)が心配そうに話しかけた。 「うん。今、洗ってくる」と夢は急いで服についたペンキを洗いに行った。 お手洗いでペンキを洗い流せたけどちょっとだけシミが残ってる。目立ちにくいシミだから大丈夫かと夢は呟いて美術室に戻った。美術室に戻ると戒斗以外、皆池見を攻めていた。 夢が戻って戒斗はペンキはまだ乾いていないから拭き取ることはできると伝えた。そうして、夢はペンキを拭き取った。奇跡的に黒いペンキは作品に残らなかった。 夢が使った絵の具はただの絵の具ではない。他の色と絡まりにくい。だから作品にペンキの跡が残らなかった。 「先生!作品にかけてあったペンキがうまく取れたので大丈夫です」と夢が言った。 皆はほっとして、授業が終わって皆が教室に戻る。すると夢を呼ぶ声がした。夢が後ろを振り向くと、心配してくれた春菜が走ってきた。 「ごめん。戻ろうとしてるのに呼んじゃって。美術のとき自己紹介してなかったね。私は胡桃沢 春菜だよ。友だちになろう!」と春菜が言った。 そうして夢にはまた新しい友だちができた。 夢が教室に戻ると戒斗やれい、春菜そしてときやが話しかけてきた。 皆は池見にあまり関わらないほうが身の安全だという。 二時間目の授業は道徳。内容は自分の家族・家庭についてだ。 夢は自分のおばあちゃんと暮らしている。夢は窓の外にいる鳥を見つめて自分の過去を思い出した。
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