辛い思い

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辛い思い

夢は、四歳の頃大好きだったお母さんを亡くし、夢のお父さんはそのショックで夢のことを置いていってしまった。 その時夢のおばあちゃんが夢のことを引き取り、今までずっと一緒に暮らしていた。窓の外を見ている夢が四歳の頃、自分のお母さんと約束したことを思い出した。 「夢、私はもう長く一緒に入れない。本当にごめんね」 「嫌だ、嫌だ。ママと一緒にいたい。ママがいなくなるの嫌!」 「夢、私がいなくてもあなたは一人ではないから。」「え?」 「ママに約束して。あなたが魔法を使えることは、誰にも言わないこと。そして人に向かって使わないこと。」 「うん。」 「そして、あなたは誰よりも強く、優しくなってね。私がいなくなっても、あなたのそばにいるから。いっぱい泣いてもいい、怒ってもいい。ただ、誰かを思う気持ちを忘れないこと........約束できるかな?」 「うん。約束する。夢、頑張る!」 「えらい、えらい」 そうして、夢は自分が大好きだったお母さんを亡くしてしまった。 昔、大好きだったお母さんとの約束を思い出して夢はつぶやいた。 「約束...か。」 少し寂しい声でつぶやいたとき、夢の目から、涙が溢れ出してきた。 「....めさん、夢さん!」と先生が大きな声で呼んだ。 「どうしたんですか、ボーッとして」先生は心配しながら、不思議そうに聞いた。夢は、急いで涙を拭いて首を振った。 「いえ、何でもありません。ごめんなさい.......あの、ちょっとお手洗い...行ってもいいですか?」先生はうなずいて、夢は教室を出て、お手洗いに行った。 トイレにこもった夢は自分の両手を見て呟いた。 「いつまで自分の正体を秘密にしないといけないのかな。お母さん、教えてほしい.......」 夢は、両手を握りしめて、うなずいた。夢はいつか、自分の本当の正体を暴かなければならないということを知っていた。 私が魔法使いだとバレたら、お母さんみたいにパシリとして使われるのかな。 キーンコーンカーンコーン授業終了のチャイムが鳴った同時に、夢はトイレから出た。 「夢さん、十分ぐらいトイレにいましたけど大丈夫でしたか?」と先生が声をかけた。夢はうなずいて、戒斗と春菜に声をかけた。 「やほ、次ってなんだっけ?」 「次は体育だよ。ていうか、夢ちゃん他に友達作らなくてもいいの?」 「あぁ、私あまり、初対面で自分から話しかけるタイプじゃないんだ。」と夢は苦笑いをした。三、四時間目は体育で、バスケットボールの授業だ。授業は順調に進んだ。運動神経は抜群な夢。 バスケットボールは夢の得意なスポーツだ。夢のチームでは、春菜、れいそして他の生徒がいる。夢に話しかけてくれる子もたくさんいた。 敵チームには戒斗、ときやなど仲のいい子がいる。 池見たち四人組は、先生に足をつって動けなくなったと仮病で見学。 「体育の授業ってほんとダルいよね。特にバスケットボールは」 「わかるー。自分がやるよりさ、他の人を見て下手かどうか見るの楽しいし」 「え、まじでウケる」 「てかさ、和也くんとれいくんかっこよくない?」 「え、何和也くん狙ってるの?」 「え、ごめん。」 「冗談だって、てかそろそろ始まるから」と池見たちは、見学者の席で盛り上がっている。 十五分で一番点数が高かったチームは他の勝ったチームと試合。 先生が生徒に説明した。試合開始の笛が鳴って、夢は素早く動いた。ボールは仲間にパスして、敵の人を上手く避けて、ボールをもらい、スリーポイントを決めた。 皆は、びっくりしていたが、池見は興味なかった。夢の素早い動きでもちろん一試合では完全勝利。夢のチームに負けた戒斗のチームは疲れ果てている。夢がれいと話しているとき、戒斗が夢に話しかけた。 「夢さん!スリーポイントを余裕に決めるとかすごいよ。しかも連続!俺はやっぱり夢さんにはかなわないよ。」と戒斗が笑った。 「そんなことないよ。和也くんも上手だったよ」と話は盛り上がっていた。 夢と戒斗が楽しく話しているのを見た池見はイラついて、ある計画を考えた。 体育の授業が終わった。バスケットボールの試合はもちろん夢のチームが完勝。給食は、カレー。皆は楽しみにしていた。夢が自分の給食を取ると池見が何かを企んでいるような顔をしてやってきた。 「ちょっと、夢さん。朝起きたときは完全に平和だったけど、あなたが来てから私の生活がくるってるじゃない。どう責任とるの?」と池見が腕を組んで話していた。 「いや、それは私に関係なくない?ていうかどう責任取るって言っても。」と夢は困った様な顔をして言った。 「何、責任取れないの?あーあ、ムカついてきた。責任の取り方を教えてあげる」そう言って、池見は夢のお盆にあった、カレーの皿を取って、カレーを夢の頭からかけて笑った。 「あなたには、カレーの頭がお似合いよ!」と池見が言い、大声で言った。 「皆、見て。夢がカレーを頭にかけたんだよ。頭イカれてる!」と言い、 戒斗、れい、春菜以外皆笑った。 「うわっ、馬鹿じゃないの」 「きっしょ!」 「どぶじゃん」 「頭イカれてるじゃん!」 「脳みそ腐ったんじゃない?」という声が聞こえる。 戒斗と春菜、そしてれいは、池見がやったということを最初から知っていた。夢は悔しさと悲しさ、皆に笑われる苦しみに耐えることができなくなって、走って教室から出ていった。 屋上に向かう階段はそう遠くない。立入禁止の屋上には誰もいないはず。そう思った夢は屋上についた。夢の予想は的中。誰もいなかった。 屋上にある水道で髪を洗った。なんとかカレーを洗い流した夢は、安心する事もできず、悔しさと悲しさの闇に囲まれていた。 夢は屋上の端っこに座った。転入した初日にいじめられたことがショックで思わず泣いてしまった。 「悔しい、悲しい。なんでこんなことになるの?」と夢が呟いた途端に。 心配になった戒斗達は、夢を探し始めた。 ー バンッ 屋上に来るためのドアが思いっきり開いた音がした。夢を探しに来た戒斗、春菜とれいだった。れいは、一人でうずくまっていた夢を見かけて声をかけた。 「大丈夫?辛かったよね。何もしてあげられなくてごめん」そう言って戒斗と春菜が来た。 「夢さん、クラスの皆には俺が怒ってやった。心配すんな」 そう夢が教室をでたとき、戒斗は夢をいじめた池見が許せなくて笑った人に向かって大声で怒った。 「おい!お前らなんで笑ってんだよ。おかしいから?面白いから?松野はどういう気持ちだったかわかんねぇのか?脳みそ腐ってんのはお前らじゃないの、人の気持ちを考えられない馬鹿はお前らじゃないの?松野はこの学校に来て初日だぞ!自分が笑ったこと深く反省しろ!」と戒斗が夢のために怒った。 そして、春菜とれいを連れて、夢を探しに行った。 「大丈夫じゃないよ!学校初日にいじめられて、この気持ちわかる?美術の授業で、七瀬さんが私の作品に黒のペンキをわざとかけた。カレーを頭からかけられた。辛いよ」と夢が泣いた。 悲しみと怒りがこみ上げて、夢は両手を強く握った。 あぁ、なんでこんな事にならないといけないの?私は何もしてないのに。 すると、春菜は夢の手をそっと握りしめて言った。 「大丈夫じゃないのはわかるよ。辛い気持ちもわかる。だから私達は今ここにいる。夢ちゃんを支えたい。だから怒らないでほしい。泣かないでほしい。もう安心していいよ」と春菜が優しい声で言った。 そばにいてくれる春菜達は、夢にとって自分のお母さんみたいな存在だった。 夢は、戒斗、春菜、れいを守りたいと強く思った。
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