本当の自分

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本当の自分

夢は春菜の言葉で少し落ち着いた。涙を拭いて何度か深呼吸をして言った。 「皆ありがとう。落ち着いたよ。皆のこと信用できるよ。」 「どういうこと?」 「れい、そこにある花瓶、割って。」 「えっ、でも」 「いいから」そう言い、れいは花瓶を割った。 「でどうするの?」春菜が不思議そうに言った。 「見てて。」 そう言い夢は片手を花瓶に向け、もう片手を回した。夢が回してる片手から、金色の粉が出て、花瓶の周りを飛んでる。 「えっ、何?」と三人は混乱してる。気がつくと花瓶は元通り。三人はびっくりして言葉が出ない。そうして夢が言った。 「私、本当は魔法が使えるの。手品とかそういうのじゃなくて、本物の魔法。ほんとは皆には秘密じゃないといけなかった。けど三人だけには言った。信頼してるから。」 そう言い、両手を下ろした。 「夢ちゃん.....凄いよ!魔法が使えるなら、池見ちゃんに仕返しできるじゃん。そうじゃない?れい、戒斗」 春菜はれいと戒斗の方を向いて、嬉しそうに言った。 「............」 二人は黙り込んだ。春菜は返事がないことでちょっと焦っていた。すると、戒斗が「魔法が使えるのは、凄いよ。だけど、春菜。自分が持っている魔法で池見に仕返しはだめだと思うよ。」 「僕も戒斗と同感だ。春菜、かたきを取りたいのはこっちもわかる。だけど仕返しは僕達も悪い人になるよ。」とれいが春菜の肩をポンポンした。 夢も仕返しは悪いと思い込んだ。四人は黙り込んで、気まずい空気になってしまった。すると、夢は言い出した。 「私、魔法を良い方に使いたいの。人を傷つける悪いことはしたくない。春菜ちゃん、仕返しはやめとこ」 「.........夢ちゃんがそう言うならわかった。」と春菜は笑顔で答えた。 「ところで、夢さんは皆に魔法が使えるってこと言わないの?」 「うん、言わないようにしてる。皆が知ったら、変なことに使われそうだから。だから誰にも言わないでほしい。」 夢は真剣な顔で言った。その目には、「絶対に誰にも言わないでよ」と言う圧があった。 夢は昔、友達に魔法が使えると言った後から、雑用係として使われていた。 3歳の頃だった。もう雑用係になりたくない。そういう思いがあった。 戒斗、春菜、そしてれいは夢を教室に連れ戻そうとしたが、夢は嫌そうだった。 「どうしたの?みんなで教室に戻ろうよ。」 「ううん、戻りたくない。また笑われるだけだから。」 そう。夢は教室に戻るとまた、嫌なことを言われると思っていた。 「大丈夫だって、戒斗がガツンと言ってたから、心配しなくていいよ」 春菜はそう言い、夢の手を引っ張った。 教室に戻ると、池見たち以外のみんなは夢の周りに来て、謝りに行った。 「ごめん、つい面白くて笑っちゃって、気持ち考えてなかった。ごめんなさい」 「わ...私も!ごめんなさい」 「ちゃんと反省してる。本当にごめん」 「夢、俺も友達なのに何もできなくて笑ってすまない」 ときやも謝りに行った。 チッ... 池見たちはイラついて教室に出た。池見が先頭、そして残りの三人は池見の後ろをドヤ顔で歩いた。 「あの女、私がカレーをかけても、調子に乗って。一体何したらいいのかしら。......意見頂戴」 池見はいじめ仲間の梨奈(りな)美咲(みさき)そして海尾(みお)に聞いた。四人は悩んで、考えていた。なかなかいい案が出てこないが、突然海桜がひらめいたように言った。 「じゃあさ、他の皆に嘘の噂を流して学校に来させない。そうしたら、池見の立場が戻ると思うよ。」 「いいね!そうしたら、怪しまれないように夢がずいぶんクラスに馴染めた三ヶ月後に実行しよう。..........決まり!」そうして、池見たちは解散した。 色々大変なことがあった夢の初日。放課後、夢と戒斗たちは公民館で楽しく遊んでいた。宿題も終わらせて、皆でオセロ、チェス、将棋などをして暇つぶしをしていた。 「あっ、夢さん」 「ん?夢でいいよ。で、どうしたの」 「明日、俺の家でゲームするけど来る?一応れいと春菜がくるけど、どう?」 「んー、行けたら行くね。」そう言い、四人は家に帰った。 夢のおばあちゃん、明子(あきこ)さんが玄関で待っていた。夢に新しい友達ができたか、トラブルはなかったかを心配していた。夢が家の玄関を開けるとびっくりして、転んだ。 「おかえりなさい。それで、学校はどうだった?楽しかった?」 明子さんは笑顔で夢を迎えた。 「う...うん。楽しかったよ。あと、玄関の目の前で出迎えるのやめて。びっくりしたじゃん」 「ごめんね、ついつい」 「おばあちゃんったら」そう言い夢は自分の部屋に行った。 「美術の作品台無しにされたこととか、給食の時間にカレーを頭からかけられたとか言えないよ」と言った。 おばあちゃんに言ったら、めんどくさいことになるからな。 夕ご飯を食べて、お風呂に入った夢は自分の部屋で自分のお母さんの形見のネックレスを握って呟いた。 「ごめんね、お母さん。約束破っちゃった。でも、心配しないで。いい人たちだったから。おやすみなさい」そう言い、夢は寝た。 夢は普段、楽しくて面白い夢を見るが、嫌な事があった日では、悲しい夢や、絶望的な夢を見ることがある。
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