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夢の世界
***
オギャーオギャー
「元気な女の子ですよ」
「あら、はじめまして。あなたの名前は夢。優しく穏やかな子で育つようにね」
「うぅぅ....オギャーオギャー」
「あら可愛いわね。これからよろしくね」
ー 3年後
「ねぇ、ママ見て!歩けるようになったよ!夢偉いでしょ!褒めて褒めて!」
「うん、偉いわね夢。歩けるようになったからには、お散歩の時間ですねー!準備しよっか!」
「うん!お菓子持ってく!」準備が整って、夢とお母さんが散歩にでかけた。
「ママ、今日はいいお天気だね。桜さんもきれいに咲いてるね」
「そうだね。夢、実はあなた魔法が使えるってこと知らないでしょ」
「え?そうだったの、夢魔法使えるの!?」
「まぁまぁ落ち着いて。そうよ、あなたは魔法が使えるの。ママも魔法が使えるの。でも魔法は良い方に使ってね」
「良い方?」
「そう、良い方。人を傷つける様なことじゃなくて、人を守ることに使わないといけないわよ」
「あい!ママ!」
『平和だったな、楽しかったな。あの人達が来るまでは。』
「あれ、あれ?あれれれれ?そこにいるのは、陽向じゃないの、横にいるのは.....娘さんかな?」
「二人でお散歩かな?」
「二人共、なんでここに?ってか今日はやらないから、夢が居るから」
「え?なんで、そこの夢ちゃんにも見せてあげなよ。」
「だから無理だって!」
その時のお母さんは必死で私を守ろうとするためにその二人の頼みを否定していたのがわかった。当時の私は何もわからなかった。すると、二人の我慢メーターが切れたことに気がついた。
「へー?拒否るんだ。.........ねぇ、やっちまお」
「やるって何?」お母さんは不安そうな顔をしていた。
「見たらわかるわよ」すると、その二人はお母さんに近づいて来た。
ー ボコ、ブンッ、ボコ、ボコ
「..っ....」今の状況の私は、半分理解していて、もう半分は理解できていなかった。
「ママ!ねぇやめてよ、ママ可愛そうだよ」
「うるせぇよ、この!ガキ!」
ー ボコ、バコ、ボコ
夢は自分のお母さんをかばった。
「っ!や...めて...よ」
「ママ!くっ!」
ー ブォン!
そうだった、私。お母さんをやってた二人を魔法で追い払ったんだった。
「ママ!ママ、ママ!」その後、お母さんは救急車で病院に行ったんだよね。あざだらけで、血も流れてて、苦しそうで。私は見るだけで辛かった。
「....マ...ママ!」
病院に運ばれていた時は、意識がなかった。何度名前を呼んでも、気づかない。お母さんはそんな状況だった。
「....マ!ママ!起きて!ママ!」私は不安でいっぱいだった。
「....あぁ、ごめんね夢」
「ママ、なんで謝るの?」
「もう...ママはだめだよ」
「...え?どゆこと?」
理解不可能。どういうこと?
「夢、ママに約束して、自分が魔法が使えることを誰にも言わないこと」
「なんで?」
「ママみたいにひどいことされるからよ。だから約束してね。」
「.........」
「できるかな夢。」
「うん!」
「偉い偉い!」
お母さんがそう言って、私と医者は部屋から出たんだよね。家に帰ったらお父さんに電話がかかった。
「パパ、どうしたの?」
ー ブンッ...
「っ...」
そうだ、お父さんは怒りで物を投げた。
「クソがァァ!」
「パ...パ?」
その電話は病院からで、お母さんが亡くなった知らせだったらしい。私と約束したのは、お母さんの体はもう耐えられないとわかっていたからだと思った。
葬式ではあまり泣けなかった。状況が理解できなかった。大好きだったお母さんなのに、悲しい気持ちはなかった。私は駄目な子だと思った。お父さんは、私をおばあちゃんの元へ置いて出ていった。
「おばあちゃん、お父さん戻ってくる?お母さんも、戻ってくるの?」
おばあちゃんはびっくりしていたが優しく言った。
「うん、帰ってくるよ。」
おばあちゃんはそう言ったけど、十年経っても戻ってこなかった。きっと私が悲しまないように言ったようにしか考えられなかった。そんなことしなくても良かったのに。
もし、あの人達が来なければこんな生活じゃないはず。お母さんもお父さんもいて、楽しい生活を送っていたはず。
「ママ!見て!」
「何?」
「パパとママと私を描いたんだ!偉いでしょ!」
「あらー、凄いね!偉いわよ夢!」
「おっ!夢、パパとママを描いたのか。凄いな」
「へへへ!」
そうだ。そうだよ。きっと今も幸せだったはずなんだよ。
あぁ、お母さんにもう一度会いたい、話したい。幸せな夢を見てる時に、私は思った。すると、夢の中にお母さんが現れた。
「夢、大きくなったね。」
「っ!お母さん?お母さんなの!?」
「えぇ、そうよ。夢、幼いあなたを置いてって本当にごめんね。」
「うぅん!謝らないでよ!お母さんは悪くない!」
「ありがとう」
「あっ、お母さん私お母さんとの約束破っちゃった。魔法を使えることを誰にも言わないことを、新しい友達に言っちゃった。ごめんなさい」
「そう、相手はいい人なの?」
「もちろん!とっても優しいよ」
「そう、じゃあ良いわ。夢とまた会えて嬉しいわ、でも行かないといけないから。」
「お母さん、私頑張るから、そばにいてよね」
お母さんは柔らかく微笑んで、「もちろんよ」そう言い少しずつ消えていった。
***
窓から、朝の光が差し込んで私は起きた。
ハッ......
窓の外にいる鳥たちが鳴いている。
「朝だ、夢の中でお母さんに会えたな」そう言い、私は服に着替えて、顔を洗って朝食を食べた。
「学校に行くね。」
「あらあら、いってらっしゃい」おばあちゃんが玄関まで見送ってくれた。
家と学校はなんとなく近い。学校につくと、池見たちが私を嫌そうに見てた。やっぱり、池見ちゃんたちは、私のことが嫌いなんだね。私はちょっと悲しかった。
戒斗たちと話したりした。一時間目が始まった。体育だった。
ドッジボールをする予定だ。池見たちと夢は敵同士。夢が普通に体育の授業をしてると、突然池見の叫び声が聞こえた。夢は誰よりも早く池見たちのもとへ来た。
「大丈夫?」夢は聞くが無視される。先生や他の皆が来ると、池見はウソ泣きで行った。
「うぅぅ.....夢ちゃんが私にボールをわざと強く投げてきたの。」
「え?まじで?」
「私のことが嫌いだからかも、ひ...酷いわ!」
池見は嘘ついた。それを聞いた皆は夢を見て言った。
「夢ちゃん酷いよ」
「池見に謝れ」という声が出て、夢は焦りだした。
「えっ!?私何もやってないよ。」
「嘘だ、池見が泣いてるじゃないか」皆が私に謝罪しろと言ってくる。
なんで?私は何もしてない。私が諦めかけていたら、春菜が私の代わりに言った。
「池見ちゃん、夢ちゃんにボールを投げられたのはいつ?」
「えっ...と...、ご...五分前よ。」池見は焦りだした。
五分前は、皆がチームを決める時だった。夢は、ずっと春菜と友樹のそばにいた。
「池見ちゃん...夢ちゃんがあなたにボールを投げたって事嘘でしょ。だって五分前、夢ちゃんはずっと私と戒斗のそばにいたんだし、ボールを持っていなかったもん。」
春菜は池見のそばでしゃがんで言った。春菜の目は真剣だった。
「夢ちゃんを落とそうとすると、容赦しないからね」と春菜が池見の耳元で言うと、池見は立って、「なんなの?春美とかなんなのかあんたの名前はどうでもいいけど、うっさいのよ。ほっといて」そう言い体育館をでた。春菜の両手には拳ができていた。
きっと、名前のことはどうでもいいと思われていたから、悔しいんだろうな。
「おい、池見平気だったじゃないか。」
「う...そだったの?」
池見が嘘をついていたのに理解したクラスメートは、夢に謝り続けていた。
そんなに、謝らなくても大したことないのにな.....
ドッジボールの試合は、順調にすすんでいた。もちろん、夢のチームは、全勝。
「やったね!夢ちゃん!」
「うん!楽しかったね!」
「負けたー、夢強すぎだろ!」
「ふふっ」
「怖い怖い怖い」
ときやが言った。あの日まで、夢の生活は光の中だった。
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