6人が本棚に入れています
本棚に追加
私は勢いよく窓際に駆け寄る。窓を開けて突き出した顔を尖った風が撫でた。
大きく息を吸うと、冷たい空気が流れ込んできて鼻の奥がつんと痛む。
その痛みを撥ね返すように私は叫んだ。
「私ならできるー!!」
『私ならできるー!!』
遠くから自分の声がいくつも返ってきた。頭の中の暗い声は掻き消えて、白い息とともに流れていく。
ずっと前から教えてもらっていた。
この問いに答えられるのは自分しかいないんだって。そして、その答えも。
おばあちゃんはいつも私より私のことを信じてくれていた。
「おはよー!」
『おはよー!』
「今日は共通テストー!」
『がんばれー!!』
「ありがとー! 大好きー!!」
『いえーい!!』
歓喜の声を聞きながら、私はもう一度小さくお礼を言った。
胸の奥からふつふつと熱が湧いてくる。今ならなんだってできそうな気がした。
「今日の私はー!?」
『さいきょー!!』
視界いっぱいに広がる山々の上を、二人の言葉が響き渡った。
私は寒さで赤らんだ両手で窓の桟を握りしめる。
強く、強く、離さないように。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!