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 私は勢いよく窓際に駆け寄る。窓を開けて突き出した顔を尖った風が撫でた。  大きく息を吸うと、冷たい空気が流れ込んできて鼻の奥がつんと痛む。  その痛みを撥ね返すように私は叫んだ。   「私ならできるー!!」 『私ならできるー!!』  遠くから自分の声がいくつも返ってきた。頭の中の暗い声は掻き消えて、白い息とともに流れていく。  ずっと前から教えてもらっていた。  この問いに答えられるのは自分しかいないんだって。そして、その答えも。  おばあちゃんはいつも私より私のことを信じてくれていた。 「おはよー!」 『おはよー!』 「今日は共通テストー!」 『がんばれー!!』 「ありがとー! 大好きー!!」 『いえーい!!』  歓喜の声を聞きながら、私はもう一度小さくお礼を言った。  胸の奥からふつふつと熱が湧いてくる。今ならなんだってできそうな気がした。 「今日の私はー!?」 『さいきょー!!』  視界いっぱいに広がる山々の上を、二人の言葉が響き渡った。  私は寒さで赤らんだ両手で窓の桟を握りしめる。  強く、強く、離さないように。 (了)
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