『第二部 比翼連理 第九章 潮騒の鎮魂歌を』のあらすじ

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『第二部 比翼連理 第九章 潮騒の鎮魂歌を』のあらすじ

 この作品は、『天と地が手を繋ぎ合うような奇跡の出逢いは、仕組まれた運命の輪環を廻す(第二部 比翼連理 第九章 潮騒の鎮魂歌を)』( https://estar.jp/novels/26252067 )の続きとなっております。  また、物語全体のはじまりは、『天と地が手を繋ぎ合うような奇跡の出逢いは、仕組まれた運命の輪環を廻す(第一部 落花流水 第一章 桜花の降る日に)』( https://estar.jp/novels/26084370 )です。  よろしくお願いいたします。  ルイフォンたちと和解したリュイセンは、タオロンと共に〈(ムスカ)〉の捕獲に向かった。いざ突入というとき、〈(ムスカ)〉が毒香で彼らを待ち受けていることにタオロンが気づく。  一時撤退し、策を練り直したとき、リュイセンは、自分の取るべき道を悟る。そして、〈(ムスカ)〉に対して、『鷹刀一族の血族としての最期をを与える』と、正面から宣言する。  初めは相手にしなかった〈(ムスカ)〉だが、リュイセンが大怪我を負っているにも関わらず、毒香をタオロンに任せ、『後継者』の自分が〈(ムスカ)〉を裁くことで〈(ムスカ)〉を一族に戻す、と手を差し伸べてくれたことを知り、リュイセンの愚かなまでの高潔さと優しさに心を打たれ、降伏した。  一方、ルイフォンたちは、『リュイセンが〈(ムスカ)〉を捕らえたあと、オリジナルの死の理由を教えることを条件に、〈(ムスカ)〉におとなしく鷹刀一族の屋敷まで来るようにと交渉する』つもりでいたため、すっかり従順になった〈(ムスカ)〉に困惑した。  しかし、話の途中で〈(ムスカ)〉の様子がおかしくなった。『最高の終幕(フィナーレ)』を思いついてしまったと言ってリュイセンを昏倒させ、『客としてこの館に入れるようにしたから、展望塔にいるメイシアを連れて、自分のところに来るように』とルイフォンに告げる。  他に誰が来ても構わない、と言われたため、ルイフォン、ミンウェイ、エルファン、シュアンが〈(ムスカ)〉の館へと向かった。  そして、ルイフォンはついにメイシアとの再会を果たした。  案内として待っていたリュイセンとも再会し、一行は〈(ムスカ)〉と対面する。〈(ムスカ)〉の口調は相変わらずであったが、訝しんでいたルイフォンも敵意はないことを認めた。 〈(ムスカ)〉との『初対面の再会』を果たしたミンウェイは、想像以上に穏やかな〈(ムスカ)〉に動揺していた。〈(ムスカ)〉の知りたがっている『オリジナルの死の理由』すなわち、ミンウェイの自殺未遂の件を伝えるべきではないのではと悩む。  そのときエルファンが進み出て、ミンウェイの気持ちを思えば、オリジナルに死を望む理由を聞いておくべきだったと懺悔する。そして、ミンウェイはオリジナルが死んだときの状況を知っていても、オリジナルの心は分からない。だから、オリジナルが何を考えたのか、同じ記憶を持つ〈(ムスカ)〉に答えてほしいと求める。 「君に生きていてほしいから」「(ヘイシャオ)がいるから、君が『死』を望んだ。だから、君が生きていけるように、(ヘイシャオ)は自分が消えることにしたんだ」という〈(ムスカ)〉の言葉に、ミンウェイは泣き崩れた。 〈(ムスカ)〉は満たされた思いで、頭を切り替え、『最高の終幕(フィナーレ)』についての口火を切る。それはすなわち、『メイシアを〈悪魔〉の契約から解放するため、〈(ムスカ)〉が命と引き換えに、ルイフォンたちに王族(フェイラ)の『秘密』を教える』というものであった。  ルイフォンは、〈(ムスカ)〉の心の内にある、さまざまな思いを噛みしめ、敬意と称賛を込めて「最高の終幕(フィナーレ)だ」と認めた。 〈(ムスカ)〉は、話の途中で事切れたときの保険にと、まずルイフォンに、王族(フェイラ)の『秘密』のすべてを記した記憶媒体を渡した。そして、語り始める。『白金の髪、青灰色の瞳という、王の異色は、先天性白皮症(アルビノ)に依るものだ』と。  今の王朝ができる以前の、(いにしえ)の王の時代。この国の片隅に先天性白皮症(アルビノ)の者が多く生まれる里があった。この里の者が今の王族(フェイラ)の先祖である。黒髪黒目の人間しか見たことのなかった(いにしえ)の王は、美しい姿をした異色の者は、神への『供物』だと信じて捕らえ、神に捧げると言って殺していった。  先天性白皮症(アルビノ)の症状のひとつに視力障害があるが、その里の出身の男子は必ず盲目だった。あるとき、供物になるのを待つばかりだった少年が、一矢報いたいと、そのためには周りの様子を知りたいと願った。そして、脳を進化させ、『他者から視覚情報を奪う』能力を手に入れた。その能力は『視覚』にとどまらず、『他者の脳から、情報を奪う』能力――創世神話に(うた)われる『地上のあらゆることを見通す瞳』となった。  この話を聞いたルイフォンは、王の能力――王の『秘密』が、〈天使〉に酷似していることに気づく。案の定、〈(ムスカ)〉は『〈天使〉は王の脳細胞をもとに人工的に作られたもの』だと答えた。  時代は流れ、『他者の脳から、情報を奪う』能力は、盲目である異色の男子すべてに表れるようになった。王族(フェイラ)の先祖は、その能力をちらつかせることで警護役だった鷹刀一族の先祖を味方に引き込み、(いにしえ)の王を(たお)して自らが王となった。  王は、異色を神聖なものとするために〈神の御子〉を自称し、神の代理人として国を治めた。また、盲目は弱点であり、情報を奪う能力は切り札となるため、王族(フェイラ)の『秘密』として隠されるようになった。  初めは『傍らにいる他者』から情報を奪う程度だった能力は、やがて複数の〈神の御子〉の能力が絡み合い、国中の情報を無制限に収集する巨大な情報回路(ネットワーク)がとなった。しかし、〈神の御子〉たちの脳に過剰な負荷が掛かり、命を落とす者が出てきた。  この事態を憂いた時の王は、自分の死後、自分の脳細胞を使って無限の容量(キャパシティ)を持った『人工の脳』を作り、〈神の御子〉たちの負荷を分散させる連携構成(クラスタシステム)を構築するように命じた。こうして誕生したのが『死んだ王の脳細胞から作られた巨大な有機コンピュータ〈冥王(プルート)〉』である。 〈冥王(プルート)〉は、王の死出の旅路の供として、近くに生き埋めにされていた鷹刀の護衛の血肉を喰らい、動力源としたため、その後、長く、鷹刀の者たちが〈(にえ)〉として捧げられるようになった。 〈冥王(プルート)〉が『光の(たま)』の姿をしていると聞いたルイフォンは、母キリファの作った〈ケル〉や〈ベロ〉と酷似していることに気づく。つまり、〈冥王(プルート)〉を破壊するために作られた〈ケルベロス〉は、〈冥王(プルート)〉と同じく有機コンピュータであり、母は自分の脳を使って〈スー〉を作るために死んだのだと悟った。  最後に〈(ムスカ)〉は、ルイフォンとメイシアに、処分も視野に入れた上で、『ライシェン』を託した。また、オリジナルは盲目であったが、〈(ムスカ)〉の作った『ライシェン』は、セレイエの――正確には〈影〉のホンシュアの依頼で、目が見えるように作ったと告げる。  唖然とするルイフォンに、セレイエの記憶を持つメイシアが、『オリジナルのライシェンは、〈神の御子〉の男子が持つ『情報を読み取る』能力に加え、〈天使〉のセレイエから受け継いだ『情報を書き込む』能力も持っていた』と語る。そして、ライシェンは自分に向けられた殺意を読み取り、自衛のために人を殺したため、危険だと判断した先王に殺されたのだ、と。  セレイエは、蘇生した『ライシェン』には、他人の感情を読み取ってほしくないと願った。故に、目の見える肉体を求めて、『死んだ天才医師〈(ムスカ)〉』を蘇らせたのだった。  いよいよ〈(ムスカ)〉の命が尽きようとしたとき、彼の看取りには、彼の(ペア)として作られたらしい硝子ケースの中の『彼女』も同席すべきだと、リュイセンが彼女を迎えに行く。すると眠ったまま目覚めないはずの彼女が苦しんでいた。慌てて外に出すと、彼女は〈(ムスカ)〉とひとつの命を共有する存在で、オリジナルのヘイシャオが望んだ『比翼連理の夢』だと言う。  自分のせいで彼女まで死んでしまうと〈(ムスカ)〉は悔やむが、彼女は『眠ったままでは生きていると言えない。今、こうして触れ合える刹那こそ生きていると言える。願いが叶った』と告げる。  そして、ふたりは満ち足りた顔で、幸せそうに息を引き取った。 〈(ムスカ)〉の死後、ルイフォンは『ライシェン』を連れて行くと即断し、一同は出発の準備に掛かる。その途中で、展望塔から合流したタオロンが、〈(ムスカ)〉が娘のために用意した部屋を見てほしいと、ミンウェイに申し出る。 〈(ムスカ)〉の用意した部屋は、幼いころのミンウェイの部屋そのものだった。タオロンは、「〈(ムスカ)〉は『娘のミンウェイ』を深く愛していた」と熱弁して去っていった。それとすれ違うように、シュアンが現れる。シュアンは「ミンウェイを追ってくれ」とリュイセンに頼まれたのだ。 「タオロンは、あんたの傷をえぐりまくった」と言うシュアンに、ミンウェイは噛みつくが、「あんたの欲しかった愛は、『娘』としてじゃねぇんだ」「なのに、『娘として愛されていた』と繰り返し言われて、辛くないわけがないだろう!?」という言葉に、泣き崩れた。 『失恋』したのだと、シュアンに言われ、納得しつつあったミンウェイ。しかし、会話の途中で、幼いころに求婚してくれた男の子を、父の命令で殺したことを思い出す。その子への贖罪として自分は幸せになってはいけない、『失恋』なんてもってのほか、そもそも自分には誰かを愛し、幸せになる資格などなかったのだと叫ぶ。  そのとき、いつもミンウェイのそばに座るくせに、決して彼女に触れることのなかったシュアンが、彼女を抱きすくめた。そして、「あんたが幸せになってもならなくても、罪は罪。ならば、あんたの()すべきことは、本当に『あんたが幸せにならないこと』なのか?」と厳しくも正しいことを言う。  その言葉を胸に、ミンウェイはようやく〈(ムスカ)〉に――『父親』に別れを告げることができたのだった。
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