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3
「げっ」
ぼくは台所の入り口で立ち止まり、うめき声をあげた。
なかの様子を目にしたからだ。
いつものように散らかりきった台所。
そのまんなかにあるテーブルには、夕ごはんの残りが、片づけられずに残っていた。
その残飯を、いま、食いあさっているものがいる。
「怪物」だ。
台所の奥の勝手口は、ドアが開いていた。やっぱり、お母さんがカギをかけていなかったのだ。
やつはあそこから入ってきて、ああしてムシャムシャと残飯を食べている、というわけだ。
それにしても、なんて醜いんだろう、とぼくは怪物を見て思った。やつらのナマの姿を見たのは、これが初めてだった。本当に、バケモノとしか、言いようがないよ。
怖かった。足がすくんで、その場から動けなかった。こん棒を二本も持っているけど、それを振り回して、あの怪物を追い払おうなんて、そんな勇気はなかった。体をこわばらせ、ただぼう然と突っ立って、怪物が残飯を食べる様子を見ているしかなかった。
そのうち、とうとう怪物に気づかれてしまった。
怪物は食べるのをやめ、顔をあげて、ぼくのことを睨みつけてきたのだった。
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