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「げっ」  ぼくは台所の入り口で立ち止まり、うめき声をあげた。  なかの様子を目にしたからだ。  いつものように散らかりきった台所。  そのまんなかにあるテーブルには、夕ごはんの残りが、片づけられずに残っていた。  その残飯(ざんぱん)を、いま、食いあさっているものがいる。 「怪物」だ。  台所の奥の勝手口(かってぐち)は、ドアが開いていた。やっぱり、お母さんがカギをかけていなかったのだ。  やつはあそこから入ってきて、ああしてムシャムシャと残飯を食べている、というわけだ。  それにしても、なんて(みにく)いんだろう、とぼくは怪物を見て思った。やつらのナマの姿を見たのは、これが初めてだった。本当に、バケモノとしか、言いようがないよ。  怖かった。足がすくんで、その場から動けなかった。こん棒を二本も持っているけど、それを振り回して、あの怪物を追い払おうなんて、そんな勇気はなかった。体をこわばらせ、ただぼう然と突っ立って、怪物が残飯を食べる様子を見ているしかなかった。  そのうち、とうとう怪物に気づかれてしまった。  怪物は食べるのをやめ、顔をあげて、ぼくのことを(にら)みつけてきたのだった。
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