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自分の好きな物。
一生をかけてでも、達成したい目標を持てること。
これらに出会うのは、実は天文学的な確率であり、幸運な部類だと思う。
好きなものを見つけて、集めて、囲まれる。
ぼくは、なんて、とても幸福な景色だろうと想像する。
けれど、収集する対象が生き物だった場合、難易度は一気に跳ね上がる。
資金・環境・食料・性格・相性・そして寿命。
生きているのだから、課題や問題が発生するのは当たり前だ。
起こりうる可能性を想像するだけで、ぼくの小さな頭はパンクしそうになる。
だけど、その問題を乗り越えて、様々な困難に立ち向かって、ぼくの友人は夢に向かい突き進んでいるんだ。
かっこいいな。と。
素直に、ぼくはそう思う。
友人は保護という名目で、とある生物を収集しているのだが、その中でも、ついに目当ての生物を保護できたと喜び、ぼくを自宅に呼び出した。
番だと紹介されたソレは、ケージの中で身を寄せ合い、怯えた瞳で友人とぼくの顔を交互に見る。
「よく保護できたな。凶暴で大変だっただろう」
ぼくの言葉に、友人はしたり顔で言う。
「それが調べてみたら、平和主義で穏やかな気質ゆえに、同種族に虐げられて絶滅危惧種になった、レア中のレアだったのさ」
「へぇ。品種は?」
ぼくは、その種族について、あまり詳しくないけど、さらさらとした黒い毛と濡れた瞳には、心惹かれるものがあった。
あ、目が合った。
かわいいなぁ。
「太陽系第三惑星・地球産の日本人さ。これからどんどん集めて、たくさん繁殖させて牧場を作るぞ」
複眼を輝かせて夢を語る友人に、ぼくは拍手を送った。
牧場が成功した暁には、ぼくにも一匹くれないかなぁと、そんなことを考えた。
【了】
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