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 翌日――。  北原精肉産業の冷凍倉庫内で3名の女性の遺体が発見され、同じ場所にいた北原友也は殺人の容疑で逮捕された。  『北原をマークしていた沢井と心美が、冷凍倉庫に入って行った彼の後をつけ女性3名の遺体を見つけた。事情を訊こうとしたが、急激な気温低下と精神的ストレスにより北原は失神。また、同様に沢井も気を失ってしまった。心美だけがかろうじて無事で、すぐに通報し北原の身柄を確保した』  ……というのが心美が係長にした報告だ。  「納得、していませんよね?」  綾名警察署の屋上で、沢井は心美と対峙する。彼女が訊いてきた。  「当然だ」  「じゃあ、なぜ本当のことを報告しないんですか?」  「言ったら君が困るんじゃないのか、お帰り屋さん?」  あの時、心美を見た聡美は驚愕の表情になり「お・か・え……」と口が動いた。そこまでは沢井も意識があったのだ。おそらく、呼び戻された霊の方はお帰り屋さんを認識できるのだろう。  すぐに沢井と北原が気を失ったのは、お帰り屋さんの術のようなものか、あるいはその上の神様の力か? そして、北原が聡美の霊のことをまったく覚えていないのも……。  今思えば、心美が松岡の相談をピックアップして強引に捜査に結びつけたのも、お帰り屋さんとしての使命感や焦りからだったのではないか?  「バレちゃいましたね。そう、私が7代目の『お帰り屋さん』です。あの後、聡美さんの霊は説得に応じて成仏してくれました。先輩が真摯に訴えかけたからじゃないかな?」  「お帰り屋さんの正体を知った者は命を失うとか、そんな決まりはないだろうな?」  「どうしようかなぁ……?」  心美の目が一瞬きらりと光った。  ギクッとする沢井。  「なんて、嘘。私にもわからないんですよ。神様が決めることだから。ただ……」  「ただ?」  「先輩が黙っていてくれて、これから私に協力してくれるっていうなら、たぶん大目に見てくれるんじゃないかなぁ?」  期待するような表情で、心美が顔を覗き込んでくる。  「協力って?」  「たま~にあるんですよね、戻ってきた霊が、未練に引っ張られてどこかに行っちゃうことが。探すの大変なんです。だから、よろしくお願いしますね」  心美の輝く瞳が真っ直ぐに向けられる。  まいったな……。  沢井は苦笑するしかなかった。                                                          了
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