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 車に戻ると、沢井はスマホを取り出す。バーには北原の名刺がとってあったので、内容をメモさせてもらった。そこに記されていたナンバーにかけてみる。  「はい……」  どこか気だるそうな声が返ってきた。  「北原友也さんですね」  「そうだけど?」  「綾名警察署捜査課の沢井といいます。ちょっとお伺いしたいことがありまして。仕事中なら勤務終了まで待ちますので、どこかで会えませんか?」  「いや、あの、ちょっと体調悪くて休んでるんですよ。感染症かもしれないので、会わない方がいいと思いますよ」  「マスクしますから大丈夫です。ご在宅ですね?」  「そ、そんなに早急な話なんですか? 安静にしていたいんですけど」  慌てながらも、強い口調で応える北原。  まだこの男に容疑がかかったわけではない。沢井と心美の2人が怪しんでいるだけだ。あまり強攻策をとるわけにもいかない。どうすべきか思案していると……。  心美が急に車を停めた。助手席の沢井に手を差し出してくる。  「な、なんだよ?」  「貸してください。私が話します」  「え? 何を?」  「いいから、早くっ!」  いつになく強い口調の心美に()おされ、スマホを渡した。
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