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6
北原は軽トラを降りると、深夜の空を見上げ溜息をつく。
聡美の幽霊が現れたため、マンションには戻っていない。ホテルを転々としている。幸いあれ以降は出て来なかった。
会社の冷凍倉庫の一部に秘密のスペースをつくってあった。鍵もかけてある。北原が管理する部門なので通常は誰も気にしないが、警察立ち会いの全体点検となると怪しまれてしまうかもしれない。
なので、今夜のうちにそのスペースを元に戻し、中の物――3人の女性の遺体――を移動させるつもりだ。
「面倒なことになっちまったな。早く処分しておけばよかった」
合い鍵をとりだし、冷凍倉庫の入口を開けた。スイッチを押すと薄暗いが電灯がつく。中はいくつもの部屋に分かれていた。奥に向かう。
すると……。
「来たわね……」
突然、聡美が現れた。遺体ではない。まるでホログラムのように朧気に揺れながら、スーと近づいてくる。
「う、うわぁ……」
後じさる北原だが、背中が壁にぶつかって動けなくなった。聡美の恐ろしいほど黒い瞳がこちらを見据えている。
「ねえ、ただいま。ただいまだってば。そう言われたらどう応えるの?」
この世の外から聞こえてくるような声に嬲られ、北原は恐怖と混乱で体も意識も硬直した。ただ訊かれたままに「お帰り……」と応えてしまう。
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