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 この伝説の特色は『ただいま』と『お帰り』で成立するところだろう。  問題なのは、その霊があの世へ帰るのを拒む可能性があることだ。通常なら、依頼者に会った後、お帰り屋さんに戻してもらい終わる。だが、勝手に動いてこの世に害をなした場合は悪霊になってしまい、お帰り屋さんでも戻せなくなるという。  今回のケースだと、殺された聡美が犯人に復讐してしまったら、彼女はとどまり続け悪霊化してしまう。  「それは防ぎたいですね」  真剣な表情で心美が言う。  「いや、まあ、本当だとしたら、な」  「まだ信じていないんですね?」  不満顔になる心美。  「あたりまえだろう」  苦笑しながら、更に説明を見た。  『お帰り屋さん』の始まりは、昔とある神社で、幼子に先立たれた母親が一目だけでもいいから会いたいとお願いしたところ、そこに祀られていた神様が叶えたことらしい。  市内に神社はいくつかあるが、どこなのかは明言されていなかった。その頃よく参拝していた者の中から一人を選び『お帰り屋さん』にして、同じような願いを持つ者を受け入れる役目を持たせたという。それが子孫の誰かに引き継がれているようだ。  しかし、これまでお帰り屋さんの顔を見た者はいない。見てしまったらあの世に送られるのではないか、という説もある。  読んでいるうちに信じそうになっている自分に気づき、沢井は思わず首を振った。
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