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ところが。
奴のバックアップを自分のそれと重ね合わせた時、俺は忘れていた怒りの様なものが熱く熱く自分の隅々まで広がっていくのを感じた。
妹が。
常にその行き先を追っていた幼馴染というのは。
「美冬」
奴は最期まで俺の名をミハイルと呼んでいた。元々女ということも言う必要が無かったから言わなかった。
だが俺の名はミハイルではなくミハル…美春なのだ。
別れた双子の片割れ。何て偶然!
しかもこの近くに!夫と二人、官吏の仕事の合間に雪の研究?
「そうだ」
思わず口に出していた。
「俺はもう、奴でもあるから」
システムの優しさに甘えてわざわざ前日外へ出て。
彼女の夫に奴の名を告げ。
それだけだとばかりに背を向けた。
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