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7
後ろから私を包み込み、隼人は満足している。
思いを遂げた。彼は完成させたのだ。彼の、理想通りに。
「かくれんぼで鬼になると、いつも千尋を一番に探して、すぐに見つけたっけ」
「うん」
――千尋ちゃん、みーつけた!
嬉しそうな隼人の笑顔。今も忘れない。
「どこに隠れるか、分かったんだ。お前はいつも、俺と同じことを考えてた」
「……」
「中学に入ってからは、それが分からなくなった」
ぎゅっと、力いっぱい抱きしめてくる。懐かしい、これは隼人の匂い。
「だけど今、理解できたと思う。やっぱり、お前は俺と同じなんだなって」
恥ずかしくて、素肌が熱くなる。誤魔化しはきかないだろう、何を言っても。
「俺を好きだってこと。ただ純粋に好きで、欲しいと思ってた。そうだろ?」
そのとおりだ。こんなにも隼人を求めているなんて、自分自身驚いてしまう。そして、それすなわち隼人の足りないものであったと、身体が理解している。
隼人は私を自分のほうに向かせて、にっこりと笑った。
すっきりとした、なんの憂いもない、明るい笑顔。
「早くこうすれば良かったんだ」
二人でシャワーを浴びて、もう一度抱き合った。
隼人は自信を持って、思うようにした。私とは違う道を歩んできた人間なのだと、人肌の気持ちよさに溺れながらも感じている。
金甌無欠――
知らなかった四字熟語。始まったばかりなのに、私は終わりを悟っていたのか。
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