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私は立ち上がり、窓辺に寄った。
ガラス張りの向こうに、小雪がちらほらと降りている。
子供の頃、隼人は雪が好きだった。
雪が降るような寒い日は、公園には誰も来ないけれど、彼だけはいつも遊んでいた。それを知る私も、わざわざ出かけて一緒に遊んだ。
二人きりでも楽しくて、二人きりだから嬉しかった。
「まだ降ってるのか。いいかげん、やまないかな」
背後に近づき、私を掴まえる。
もう、隼人の匂いがわからない。男性用のフレグランスが、邪魔をして……
「帰国するのは来月だ。千尋」
「……」
「恋人として、付き合ってくれるね」
冷たい雪。私の心を凍らせる、冷たい隔たり。
「千尋?」
「ごめんなさい」
涙が零れそう。
でも、それすらも凍り付いて、私は動けなかった。
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