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成人式の夜。中学の同窓生による二次会の席。あれは、街のどこかの居酒屋だった。
お酒を飲んで、これで大人になったぞと、竹内君が、私の隣ではしゃいでたっけ。彼と私は3年間同じクラスで、委員会やクラブが重なることが多く、男子の中では最も親しい人だった。もっともその時はハタチで、男の子ではなく男の人になっていたけれど。
「千尋は高校出てから何してるの。は? 就職浪人。どうしても勤めたい会社があるだと? このご時勢に、なんちゅう贅沢。相変わらず呑気な奴だ!」
親の経営する工務店で、後継ぎになるため仕事を覚えている最中だと言う竹内君は、怒ったふりをして私をコツンと小突いた。
「俺たちは日々汗水たらして働いてるって言うのに。なあ、隼人」
どきりとした。カウンター席の端に座る私。その隣が竹内君。その向こうに、いつの間にか彼が腰掛けていた。
竹内君は、いつ気付いたのだろう。
「あ、お前はまだ大学生か。ちぇ~っ、俺だけか、毎日仕事してるのは」
「結婚してるのも、だろ」
隼人が冷やかすように言うと、竹内君は頭を掻く。
「どうもすんません!」
「謝ることないじゃないでしょ」
「いやいや、千尋。今のはな、幸せすぎてすんませんってこと!」
私と隼人はぽかんとするが、同時に吹き出すと、声を合わせて笑った。
幼馴染みとの、何年ぶりかの交流。
懐かしさに浸りながら、昔のことをぼんやりと思い出した。
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