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 タクシーを降りた場所は、空港に直結する高層ホテル。  街から離れた空港まで来たのにまず驚くが、ホテルという建物にも足が竦んだ。どういうことかと彼を見上げるが、隼人は構わず引っ張っていく。  興奮と緊張をない交ぜにした表情に、私はどきどきして、でもついていった。  自分が愚かしく、いかにも簡単な女に思える。  だけど、ここに辿り着くまで包んでくれた彼の温もりが、私を捉えて離さなかった。  私達には背伸びしすぎの、ホテル最上階に位置するバーの片隅。夜景も眩しい窓側の、小さなテーブルで向かい合う。  自然に声が抑えられ、内緒話のようになる。  バーテンダーがカクテルをこしらえる音が、際立って聞こえた。 「竹内に頼んだのさ。それとなく、千尋と絡ませてほしいって」 「えっ?」  それはつまり……  照れる彼を見て、竹内君の合図の意味をはっきりと理解した。 「だって千尋は、俺をあんまり好きじゃないみたいだし」 「そんな」  勘違いだよと言う私に、だったらどうして避けてたのと、彼は責めた。 「中学に入ったら急によそよそしくなって。俺、何かしたっけなあって、真剣に悩んだぞ」 「う……」  思春期の劣等感。そのことを告白したら、彼は呆れた。
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