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大きくて厚みのある手が、私の頬を撫でさする。
「きれいな肌だよ。つるつるしてる」
「……ハタチを過ぎたら、こうなったの。体質が変わったのかも」
「俺はどっちでも気にしないけど」
下着姿になった私から離れると、彼はベッドの上で膝立ちになり、今度は自分に取り掛かる。スーツやワイシャツをまどろっこしそうに脱いでいく。スラックスのベルトを緩めると、床におりて、すべて素早く放り捨てた。
男の人の裸なんて間近で見たことがない私は珍しいように眺めていたが、上に覆いかぶさってきた途端、それがいきなり獰猛なものに感じられ、戦慄した。
「隼人、私っ……」
「俺に思い出させてくれ」
及び腰になる私の行く手を阻むように、彼は包囲した。目で、腕で、はりつけにする。
私はこれから、処刑されるのだろうか。
「ここまでの俺は、理想通りの人生を歩んでいる。だけど、何かが足りないんだ。分かるか、千尋」
素肌が触れ合い、彼の体温を直に感じる。肌と肌が重なる感触は、言葉にできないくらいの快さだった。
懐かしいような、すっかり安心できるような。
「隼人に、足りないもの?」
呼吸を乱す私の問いに、彼は頷く。
「そうだよ。それが何なのか、実は知っていた。だけど、どうすればいいのか分からなかった」
首筋に口付けながら胸を探り当てる。
「柔らかい。どこもかも柔らかいんだな、女の体は」
「はやと……」
彼の皮膚が汗ばみ始める。
「初めて?」
低い声で囁かれ、びくびくしながら「うん」と、小さく返事をした。
「俺も」
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