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・人気小説家の連載が山場を迎える最中、記憶喪失に!雑誌の売上げのためになんとかしろと無茶を言われて!?
担当編集者は編集長から無茶を言われ錯乱状態に陥った。記憶喪失になった人気小説家の頭にドリルで穴を開け砕けた骨や脳みそを鼻水吸引器でズズズッと吸い取ったのだ。それを虫眼鏡で丹念に調べると――まさかの結果が!
「編集長、ありました!」
「よくやった! どんな話だ」
「はい、話のアイデアが二つ見つかりました」
それは次のようなものだった。
↓
・二人でタイムカプセルを埋めた三日後、親友が自殺した。私は一人、カプセルを埋めた山を登る――。
・山神へ生贄に捧げられた少女は、神を喰って新たな山神となり、村へ帰る。すべては復讐のために――。
↑
これを読んだ編集長の反応は、担当編集者の予想を超えたものだった。
「だめだぁ! これは、うちの読者にはウケない! どちらも没だ!」
担当編集者は納得できなかった。
「どうしてですか? 予想外の展開じゃないですか! 最高に面白いですよ!」
編集長は首を横に振った。
「俺たちプロの編集者にとっては、どちらも面白い。だが、うちの読者には合わないんだ。残念ながら俺たちが相手にしている客層は、こういう凝ったプロットについていけないんだよ。うちの読者が求めているのは、もっと動物的な、煽情的な、ただただ本能が欲している読み物、それだけなんだ。小難しい話を出しても眠くなるのが関の山だよ」
担当編集者は悲しげに言った。
「ですが、このままですと連載の山場が山場にならなくなります。それでも、よろしいのですか?」
苦く笑って編集長は煙草に火をつけた。
「いいのさ……俺たちの出版する小説なんて、山なし・オチなし・意味なしの作品だけなんだから」
この<山なし・オチなし・意味なし>の頭文字から生まれた<やおい小説>が今日の出版業界で隆盛を極めるBL小説のルーツの一つと言われている。
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