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三日ほど歩き、ロシェルは故郷の土を踏んだ。
辺境だというのに、村は驚くほど大きくなってきていた。
元々、肥沃な土地だということと、今の村長が穀倉地として都会に村の存在意義をアピールするために必死なのだとは聞いていた。
だが、村の入り口は場所がかなり移動しており、村としての規模がかなり大きくなっていた。
森の開拓も推し進めたのだろう。森だった場所が田畑へと変わっている。
ロシェルはまさかと思い、村の奥の山に目をやった。
そこだけ黒い森が広がっていた。
どうやら、そっちのほうは昔のままのようだった。
村の入り口をくぐり、ゆっくりと通りを進んでいく。
真新しい家が多い。
村人の規模も大分増えているようだった。
見たことのない顔が、何処のよそ者だろうと、ロシェルを懐疑的に見てきていた。その様子に彼は苦笑しながら、村の中心を目指す。
彼が歩いて行くと、自然と人々の視線が彼へと集まる。しかし、誰も彼に話しかけようとはしない。
皆、まさか? という顔をしてぽかんとしている。
ロシェルはそれを感じながら、懐かしい村の光景を見渡していった。
ちょうど昼前、村に一件しかない定食屋、【カルロアンバス】が目の前に現れた。店主のカルロは大きな街で修行した料理人だから、様々な料理が出来ると評判だったのを思い出す。
彼が店の中に入ると、ちょうど赤髪の女性が厨房から料理を運び出してきたところだった。
「いらっしゃいませ」
明るい声が店内に響き、女性は忙しそうに料理を注文のテーブルへと運んでいく。
彼女を見届け、ロシェルはゆっくりと空いている窓際の席に座った。
店の外は子供達が元気に走り回っていた。
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