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ロシェルは飛び起きた。
全身が嫌な汗でぐっしょりと濡れている。
熱帯夜の季節も終わり、涼しくなってきているのにもかかわらずだ。
「なんだ?」
彼は額に手を当て、ゆっくりと頭を振った。
そして、ゆっくりと思い出す。
夢を見た。
故郷の村の外れ幼なじみのウェービスが暗い森の中で一人泣いていた。
ロシェルが声を掛けると、彼女は顔を上げた。泣きはらしたひどい顔だったのをぼんやりと思い出した。そして、ウェービスの後ろにいる不気味な首無しの騎士とすすり泣く女。
気の強いウェービスがそこまで泣いたところを見たことがあっただろうか?
彼は汗を吸ったシャツを脱ぎ捨てながら、ゆっくりとベッドから這い出した。
ロシェルが村を飛び出して五年が経とうとしていた。今では冒険者として、周囲からも認められ独立して生計を立てることが出来ている。
窓を開けると、すっかりと日が昇っていた。
この街にはあと3日ほど滞在するつもりだったが、どうするか。
脳裏にはまだウェービスの表情が浮かんでいた。
「たまには、休暇も……だな」
その日、彼は宿を引き払い荷をまとめて街を出た。
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