それでもボクは

1/4
前へ
/4ページ
次へ
**** 東京にある静かな住宅街に住む小学生の翔太は、母親の由美と二人で暮らしていた。由美はシングルマザーで、昼夜を問わず働きながら翔太を育てていた。彼女は強くて優しい女性で、翔太にとっては世界で一番大切な存在だった。 **** ある晴れた土曜日の朝、翔太はベッドの中で目を覚ました。キッチンからは由美が作る朝食のいい香りが漂ってきて、翔太は自然と笑顔になった。 「おはよう、翔太。朝ごはんができたよ。」 由美の優しい声がキッチンから聞こえてきた。 「おはよう、母さん。」 翔太は眠そうな目をこすりながらキッチンに向かった。テーブルには、由美が作ったふわふわのオムレツとトースト、そして新鮮なサラダが並んでいた。翔太はその光景を見て、にっこりと笑った。 「わあ、美味しそう!母さん、ありがとう。」 翔太は嬉しそうに言った。 「どういたしまして。今日は一緒に公園に行こうか?」 由美は微笑みながら提案した。 「うん、行きたい!」 翔太は元気よく答えた。 朝食を終えた二人は、公園に向かった。公園では、翔太が大好きなブランコに乗り、由美はベンチに座って彼を見守っていた。 「母さん、見て!高くこげるよ!」 翔太は楽しそうに叫んだ。 「すごいね、翔太。気をつけてね。」 由美は優しく声をかけた。 その後、二人は公園の池でボートに乗り、のんびりとした時間を過ごした。由美と一緒に過ごすこの瞬間が、翔太にとって何よりも大切だった。 「母さん、今日は楽しかったね。」 翔太はボートから降りると、満足そうに言った。 「そうだね、翔太。私も楽しかったよ。」 由美は微笑みながら答えた。 その日の夕方、二人は家に帰り、夕食の準備を始めた。由美と一緒に料理をしながら、笑い声が絶えない楽しい時間を過ごした。 翔太が小学校五年生の時、母親の由美は以前よりも体調が優れない日が増えていた。彼女は疲れやすくなり、仕事から帰るとすぐに横になることが多くなった。それでも、由美は翔太に心配をかけたくない一心で、元気な姿を見せようと努めていた。 ある日、翔太が学校から帰ると、由美はソファに横になっていた。彼は心配そうに母親の顔を覗き込んだ。 「母さん、大丈夫?今日は早く帰ってきたみたいだけど、体調悪いの?」 翔太は不安げに尋ねた。 由美は微笑みながら、ゆっくりと起き上がっ た。 「心配いらないよ、翔太。ちょっと疲れただけだから。母さん、頑張るからね。」 「でも、無理しないでね。僕、手伝えることがあったら何でも言ってね。」 翔太は真剣な表情で言った。 「ありがとう、翔太。でも、母さんは大丈夫だから。翔太は勉強と友達との時間を大切にしてね。」 由美は優しく頭を撫でながら言った。 その夜、由美は夕食の準備をしながら、翔太に元気な姿を見せようと努めた。彼女は笑顔を絶やさず、翔太と楽しい会話を交わした。 「今日は学校で何があったの?」 由美は興味津々に尋ねた。 「今日は理科の実験があって、すごく面白かったよ!先生が火山の模型を作って、噴火させたんだ。」 翔太は目を輝かせながら話した。 「それは楽しそうね。翔太は理科が好きなんだね。」 由美は微笑みながら答えた。 「うん、すごく好き!母さんも一緒に実験してみたい?」 翔太は嬉しそうに提案した。 「そうね、今度一緒にやってみようか。」 由美は笑顔で答えたが、その目には少しの疲れが見えた。 翔太は母親の体調を気にしながらも、由美の笑顔に安心していた。彼は母親がどれだけ自分を大切に思ってくれているかを感じ、ますます母親を支えたいと思うようになった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加