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「俺、この作品の作者と友達なんだ」
「はあ?」
楓は呆れたような声を上げた。無理もない。彼女は俺のことも小説の登場人物の一人だと思っているのだろう。
一から説明したいけど、ダイブの制限時間があるからそういうわけにもいかない。俺は気にせず話を続ける。
「アイツ言ってた。楓さんはまだ誰とくっつくか分からない。俺の場合は登場人物が勝手に動き出すから、って。だから、楓さんも諦めずに自分の意志で動いてみなよ。そうすればきっとその思いがアイツに届いて、運命だって変えられるはずだから」
「ちょ、ちょっと、本当に何言ってるの? アンタ、この世界の人じゃないの?」
「地味で陰気な人と青春したいんだろ? できるよ、きっと。俺が保証する」
「ケンスケ……」
そこまでなんとか言い切ったところで俺は自室のベッドの上に戻っていた。気付けば、涙が頬を伝っていた。
「さようなら、楓さん」
小さく吐いて、俺はケータイの電源を落とした。
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