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「えっ」
すっかり了承が貰えると思っていた俺の口からは間抜けな声が漏れた。怜は続ける。
「読者の声で作品のあらすじを変えてしまうなんてナンセンスだよ。本好きの一人として、そんなことに加担はしたくない」
「……」
「それにアイツ言ってただろ、今までで一番本気で書いてるって。だったらそれを黙って応援してやるのが、その、友達ってやつなんじゃねぇの」
「怜……」
らしくない怜の熱い言葉に、ハッと目が覚めたような心地がした。俺は自分の恋に目が眩み、千聖の挑戦に無粋な横槍を入れようとしていたのだ。
そんなことは親友としても、そして作家・ちぃのファンとしても失格だ。俺は馬鹿だ。間違っていた。隆将も、ばつの悪そうな表情で俯いている。
「やーべー、やーべー、忘れ物サンバ! ……あれ、どうしたんお前ら。景気の悪い顔して」
急に、変な替え歌を歌いながら千聖が戻ってきた。俺たちは先生に怒鳴られた生徒のように慌てて姿勢を正す。千聖が首を傾げる。
俺たちは互いを見合わせた後、うんと以心伝心で頷き合う。俺は千聖に笑顔で告げた。
「何でもねぇよ。それより全力執筆デー、頑張れ。更新楽しみにしてるから」
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