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「ただいま」変則
翌日…。
部屋のドアを開けて「ただいま〜」と言わずに彼女に近づく。するといつもと違う僕に、一瞬少し驚いた顔をして、すぐに寂しそうな顔をして、残念そうに言う。
「恭ちゃん、おかえり…どうしたん?今日は“だだいま”って言ってくれへんの?昨日“明日の「ただいま」楽しみにしといてな”って耳打ちてくれたし、すっごい楽しみにしててんけどなぁ…」
僕は、にっと笑って言う。
「ただいマンボゥ!…♪チャッチャ…チャチャチャチャチャ!チャチャチャチャチャッ!!…ウーッ…マンボッ!!」
それを聞いた彼女は、目を見開き固まる。
「はいはい!めいちゃん、固まらんと、僕と一緒に踊る!はい!めいちゃん、両手、出して…両手、ハイッ!」
そう言って、彼女へ両手を差し出すと、ぎこちなく両手を差し出す彼女。僕は両手でガッチリ手を繋いで歌い出す。
「♪チャッチャチャラッチャ チャッチャチャラッチャ チャッチャチャラッチャ チャッチャチャラッチャ…♪」
そして、歌に合わせて僕リード(?)で、2人でムチャグチャなダンスを暫く踊る。
ーーーーー
「ハァ〜ッ…疲れたぁ………でも、こんな“ただいま・おかえり”は、初めて!ムッチャ楽しかったわぁ〜。こんな楽しい“ただいま”考えてくれてありがとう…恭ちゃん」
彼女はそう言って、僕に抱きついて、ギュッと痛いほど抱き締める。僕は彼女の背中を優しくトントンしてから伝えたかった事があったけど、腕ごと抱き締められたから背中トントンが出来ない。だから伝える。
「明日も“ただいま”楽しみしといてな!」と。
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