2 死を覚悟した私、なんか真っ裸で目覚めた。ぴえん

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2 死を覚悟した私、なんか真っ裸で目覚めた。ぴえん

まっさかさーまーに♪ 昭和のアイドル歌謡のように、崖から落ちていた私が次に目を覚ましたのはぬくぬくベッドの中だったのです。 なんかすごい夢を見ていた気がするんだけどな、思い出せない。 おしまい。 あらまぁ殺されかけたのは夢だったのかな? ってね。夢オチだったならどんなに良かったことか。 ぼんやりと合わない視界は全面肌色で自分のベッドの中ではないことは確か。 すぅーすぅーと頭上に感じる誰かの静かな息づかいにここには私だけではないことに遅ればせながら気づいちゃった。 あらいやだ、朝チュン? 二日酔いって感じはないけど崖から落ちて誰かに助けてもらって一目惚れされーのそのままベッドイン? あらん、ドアマット役の私にしては情熱的展開。 って、ない、ないわ。私の外見でそれはないっしょ。 前世の容貌から比べればマシとはいえ、我われ一目惚れされるタイプの女子ではないよ。 うーん?これは一体どういうことなのかな? よくわからないけど眼の前に喉仏があり視界の下には男性の胸部が見えるということは腕枕からの横向き抱き込まれ寝って感じなのだと思う。 えっと、あったかくって何か安心できるいい匂いがしてる。そしてあらまぁ素敵な胸筋。張りがあってちんまい乳首がピンクでかわいい。私の中の痴女がスリスリしたいと叫ぶ。 すはーすはー落ち着け!!俺!! 他人の身体に勝手に触れてはいけません! 良い子のお約束事です。うん。 うーんしかし、良い匂い。 前世でも相性の良い異性は匂いでわかるって言ってたし、匂いだけで判断するならばこの殿方私にはなかなか相性がよろしい方だったりして?あらやだ、ついに運命の人キタコレ?すれ違いざまに香るフェロモンに引き寄せられちゃう系?地味顔聖女は夜毎愛される系?お腹の奥がきゅんきゅんすんね。匂いでわかんだね。きゃはーヨダレが。じゅる。 だがしかし!一応レオ王子という婚約者がいる身では今すぐどうこうできないから止まれ俺!静まりたまえ煩悩!なぜそんなに荒ぶるのか!八百万の神よわれに力を!ピンクの乳首から視線をずらす力を!! そんな脳内祓えたまえ浄めたまえご神事の賜物、私は魅力的なお胸からやっと視線をそらした。 うぐぐぐ。 非常に残念。レオ王子がカオリンさんと浮気していた事実と私が今現在、王子以外と同衾しているこの事実天秤にかければ私の行為のほうが悪いと断じられてしまうのが世の常です。あぁ無情。 生まれてくるなら権力者!まじこれ。次回の生があるなら叶えたい野望。 でも、本当に良い匂い。 この匂いは彼の体臭なのか寝具から香るものなのか。 くんくんくん。 「くすぐったいよ」 ふふふ、とかすれた声がしてなんか柔らかいものがおでこに! 慌てて距離を取ろうと身を捩ると更に抱き込まれて「おはよう。奥さん」ってぎゅうぎゅう抱きしめられて気づいた。 滑らかな肌と私の肌が触れ合って気持ちいい。 すべすべー ではなくて!! 私もこの殿方も全裸です!! なんかニョッキリしたものが私のおヘソ付近に!! ぎゃー!! 下は履いてると信じていたのに。っていうか、 「え?奥さん?」 普段から寝起きの私はたいそう目が腫れぼったくて見られたものじゃない、それがびっくりしてさらに間抜けな顔をしていたんだろう。いい香りのする殿方は甘い蜂蜜みたいな視線のままおかしそうに笑った。 「もう忘れたの?あんなに愛し合ったのに?」 耳元に口を寄せて囁かれる。 ベルベットのような官能的な声が耳朶を打つ。 鼓膜から背筋をおりて尾てい骨に響いてお腹の奥がじゅん!ってくるような。 声優オタクが言う、耳が孕む!ってやつよ。これは! 「思い出させてあげようね」 ぎゃ!! そっと背中を撫でられてオタクのライフはゼロ!! この展開は朝からエチチ!! あれだ、昨日の夜お腹の中にいっぱい出された白いやつがあるから「まだ濡れてるんだ、朝からエッチだね」とか言われて「じゃあもう入れていいよね」って前戯もろくすっぽしないでお腹の奥の奥まで固くて熱いの入れられちゃって、あんあんらめぇ(ハート)「だめっていってもぎゅうぎゅうに絡みついて来るんだけど、そんなに僕の子種が欲しいんだね、いいよ、あげる、赤ちゃんつくろうね」パンパン!!「はらめ!!」パンパンドチュドチュ!!最後は白目むいて気絶。 ってやつでしょ!! 知ってんだ、俺!!エロ同人も嗜んでたから!!知ってんだ!! いいね!いいよぉ!!イケメンに翻弄されてよくわかんないまま最後は快楽落ちしちゃう女の子かわいいよね。大事なのは女の子が本気で嫌がってないところとイケメンが女の子を好きだってところだよね。 はぁー妄想だけで滾っっちゃったよ。 ごめんね。精神年齢は前世と合わせるとアラフィフなんでね。 自分の体のことくらいわかるんだわ。 ごめんね。 我 全然乙女ぞ!! ぎゃーなにこの格好、カエルなの?カエルだったの?痛い!いってぇ!やめろやこら!!って記憶がないもん!おまたの痛みもないもん! 「あら、何一つやましいことをしてないのを思い出させてくださるのかしら?」 我 腐っても聖女ぞ!嘘つきは許さんぜよ!! そっと胸を手で押すけどびくともしないな、これ。うわーいいな、この弾力。ち、ちょっとだけもみもみしても? つい指先が彼の胸で這う。はっと気づいて見上げればそんな私を見つめる彼の目にも欲の火がやどっていた。 あれれれれ?既成事実コースこれ? 今からやられちゃう? 顔は、顔はいいけど、処女を捧げるほど存じ上げないのでね、このまま引いていただけると大変ありがたいです!! 「私達には何もなかったでしょう?」 精一杯のブラフで眉を吊り上げ不敵に笑う私に夫(仮)は一瞬だけ目を見開いた。 あら瞳の色は明るい青とグレーのオッドアイ?綺麗だね。 鼻筋もシュッと通ってて薄めの唇から覗く白い歯も素敵ね。 肩まであるウェーブのかかったレオ王子と同じ金色の髪もいい感じ。 「さすがは聖女どの、お見通しというわけか」 少しだけ目をすがめ片方の口の端だけ持ち上げるようにぎこちなく笑うと夫(仮)は私の身体を放してするりと寝台を出て行ってしまった。 (え?) 真っ裸のまま部屋を出ていく彼の後ろ姿もギリシャ彫刻を思わせる大変お素敵なもので。 メガネがないから遠ざかるプリプリのハリのあるお尻がぼやけてしまってよく見えなーい、残念。 メガネーメガネーどこ行った? 眼鏡がねぇと、目が無ぇ!なんちて。 ふざけてないと彼が一瞬見せた寂しげな表情の裏を読もうとしてしまう。 (私、彼を傷つけた?) ドアが閉まる音に気づけば一人部屋に取り残されてしまった。 うぅ総合点でめっちゃかっこよかったんですが……前言撤回、昨日の夜のこと思い出させてってすがって抱かれてもいいですか? だめ?だめかー。 見た目だけで男を選んじゃだめだって前世の私が叫ぶ。そうね、前世から学ばねば! しかしこのまま一生乙女コースだったらどうしようかな。 のがした魚は大きいってね、ぴえん。
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