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ホーンラビットが倒せない
ゲーム内で次の日。ちなみにこのゲーム、現実世界の10倍の速度で時間が流れるらしい。半日寝込んでも、現実世界では1時間といったところ。そう考えるとまだ余裕だ。まずはステータスを確認。HPはばっちり全快していた。いいね!最大値3だけど。
……さて、まずはどうしようか。買い物して、外に出て、魔物を撃破。今日はそのあたりまでかな。3つ目が難易度高い。あとはステータス改ざんしとかないとね。特にジョブ。このままだと「私はスパイです」って首から札下げて歩いているようなもんだし。さて、やりますか。
〈ステータス〉
名前:サロナ
種族:人族
レベル:1
ジョブ:催眠術師
攻撃力:2
防御力:2
素早さ:4
魔力:3
運:1
HP:3
MP:4
(スキル)
催眠術……相手1体に幻覚を見せることができる。
完璧だ。催眠術師なんてジョブがあるのか知らないけど、あの多数の一覧をメモを取れない状況で記憶している人間がいるとも思えないからいいだろう。どうせ催眠メインで戦うわけだし。
……そういやこのゲームって他人のステータス見られるのかね? というかそもそも、この部屋は何? ひとまず、部屋の外に出てみるか。
ということで僕はゆっくりと扉を開き、隙間から、おそるおそる顔を覗かせてみた。廊下は薄明りの灯った狭い通路になっており、扉が何個か並んでいる。人の気配は一切感じられず、あたりはしんと静まり返っていた。とりあえず廊下の突き当りに階段があったので、1階に降りてみる。
すると、1階は開けたホールになっていた。お、カウンターにおじいちゃん発見!頭の上に「NPC」と出ているからプレイヤーじゃないな。OK。話しかけてみよう。
「起きたか。昨日1日出てこなかったから心配してたんだぞ。どうしてたんだ?」
おお。NPC、ちゃんと会話ができる。しかし昨日ね。正直何もしていない。というか、部屋から出てすらいない。
「昨日は部屋で転んだ時に頭を打ってしまって、大事をとって休んでいたんです」
「そりゃ災難だったな。無理はしすぎない方がいいぞ」
とりあえず武器屋の場所を聞いてみるか。あとはギルドとか?定番だよね。
「武器は通りを1本南に入った向こう側にいい店がある。防具屋はその向かいだ。ギルドは大通りを挟んで逆のブロックだな。そこら中に看板が出てるからわかりやすいぞ」
なるほど。じゃあ目的地もはっきりしたことだし、町へ散歩に出かけるとしますか。
そして2日目にして、僕はやっと外に出た。通りにはNPCとプレイヤーが入り混じって歩いていて、目を凝らしたら頭の上に、名前とプレイヤーかNPCの表示だけが見える。ステータスまで自由に見られるわけではないらしい。よしよし朗報。……でもどうせ、鑑定スキルとかあるんだろうなあ。
その後、武器屋と防具屋をはしごした僕は、ダガーと、動きやすいとお勧めされた絹のローブを手に入れることに成功した。よしよし順調。
ちなみに僕の初期装備は「布の服」のみだった。上位魔族とはなんだったのか。それにしても部屋を出る前にちらっと見たら普通に下着も身に着けてたんだけど。どうなってるんだ。体を確認したときは、何だか悪いことをしてるような気分になってしまった。これも全部運営が悪い。
ところが、買い物を終えた時点で、当初1500ゴールドあった手持ち金は早くも残り300に。考えなしに買いすぎたかもしれん。
しかし、店を出てステータスを確認したところ。攻撃力は12(+10)、防御力は16(+14)に上がっていた。なんと6倍と8倍というぶっ飛んだ上昇率。よしよし。
さて、次はギルドかな? 町を見回りついでにゆっくり見に行きますか。
「じゃあパーティーに参加したくなったら連絡頂戴!まずはフレンド登録しようよ!」
「ありがとうございます!また、よろしくお願いしますね」
これで何度目になるだろうか、いきなり通りで声をかけてきた相手を僕はニコニコ笑ってやり過ごした。そして、もらった連絡先を先ほど作成したグループ「ナンパ野郎」に突っ込む。
外見がいいのでわからなくもないけど、初対面をいきなり勧誘とか。それにしても僕はプレイヤー扱いじゃないのにフレンド登録とかはできるし、普通にプレイヤーに見えるらしい。さすが運営様がバックについてるだけあって、やりたい放題である。
そして、やっと辿り着いたギルドの扉を開ける。中は少し暗く、冒険者らしき集団がいて。カウンターに受付のお姉さん、壁には何やら紙の束がべたべたと貼られていた。
……来たはいいけどここ、何ができるの?とりあえず受付のお姉さんに聞いてみた。
「冒険者登録、クエスト受注、訓練場でのスキル習得、が可能です。どうしますか?」
なるほど。冒険者登録はしておくべき? あとはスキルで取れそうなのがあればそれも。すると、登録には300ゴールドかかるとのことで、早速一文無しになった。スキル習得もお金がかかるとかで、できなかった。
……運営様! どうにかなりませんか! でもよく考えたら原因は散財しまくった自分のせいなので、すごすごとカウンターを後にする。……その時、突然声をかけられた。
「なあ、おい」
まずい。殺される。振り向かずにダッシュし、扉を開け、表に出る。と、ローブが足に引っかかり、そのまま僕は通りに向かってヘッドスライディングすることになった。誰だこの服を動きやすいって言った奴は。
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