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翌日。
エティエンヌはピエールから登山用の装備を借りて、店へと向かった。
梨々香は昨日のシェフらしい服装とは違い、華やかな色の防寒着を身に着けている。
縛られていない髪が、風にゆっくりと揺れていた。
「いくつかルートがあるのだけど」
「急がないよ。今回の来日には、たっぷりと時間を取ったんだ」
しばらく考えてから、梨々香は言う。
「あのね。私、北横岳という山が好きなの。道は穏やかだけど、山頂からの景色がとても素敵なの」
「なら、そこにしよう」
こともなげに決めたエティエンヌに、梨々香は目を細めた。
「そして。……簡単に言うと、2種類のルートがあるの。1つは、なだらかなまわり道」
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