幻想学園第一節 ーThe First Storyー

1/9
前へ
/9ページ
次へ
まず、この画面の先にいる貴方に聞いておこう。貴方は”平行世界”というものを知っているだろうか。 簡単に説明すると、パラレルワールドみたいなものだ。 その”もしも”の世界は、何千何万と無限大にある。 ここではその平行世界は”OF”とでも呼んでおこう。これは、その”もしも”の世界の一つの物語である。 この世界の『題名』は…おっと。そろそろ時間のようだ。 それでは、この摩訶不思議な世界を楽しんでいってもらいたい。 ザー…と、荒れ果てた荒野に一人。 少年は虚空を見上げながら豪雨に打ちひしがれていた。 禍々しく、少し不気味な音を立てて、 少年は空に文様を描いてそれを発動させた。 『……………これで、よかったんだよな……。』 ………そして、そして、そして。この瞬間、世界の認識が、大きく変わったのだ。 ”第一節” ー出会いと運命ー 第一話 『停滞していた時間』 『やっぱ、春っていいな。』 桜が散り始めたこの季節に、少年は一人通行路を歩きながら独り言を呟いていた。 はじめましての人ははじめまして。僕の名前は月華鈴といって、今日この学園、詳しく言うと幻想学園ってのに入学する新入生だ。 『気温は丁度いいし、新しい行事が始まるし、何より桜が綺麗だ。』 少年は通行路の道端の木に咲いていた桜を見上げながらそう言った。 『あ、見つけた…!おーい!鈴ー!』 その人物は鈴に手を振りながら呼びかけた。 『……ん? あ、アイツは…』 少年はその人物に気づくと、 顔が青ざめながら逃げ出そうとした。 『あっ、待て―――っ!今日という今日こそは一緒に登校してやる!』 この僕を追いかけてきてる奴の名前は愛奈。 幼馴染みで茶髪のショートヘアをしている。毎朝こうやってずっと僕を追いかけてくるしつこいやつだ。 本当に勘弁してほしい。 【少年逃走中…】 『ぜぇ…ぜぇ…んもう! ホントに逃げ足も速いんだから!』 少女は息切れながら、悔しそうに地団駄を踏んだ。 『…よし、ここまで来れば流石にあの筋肉脳筋馬鹿も付いてこれないだろ。』 『さて、目的地に行くとするか。』と、安心しきってた瞬間にまた筋肉馬鹿の声が聞こえた。 『こっちかぁ―――!!?』 『うげっ…まだ付いてくんのか』 少年は顔をしかめながら再び走りだした。そして裏路地を見つけて 『…ここだ!』 と、少年は裏路地に入っていった。 『ど――こーだぁ――!!』少女は大声で叫びながら、裏路地を素通りして行った。 『よし、危機は去った。』 少年は安心しきっているため歩き出した。 『〜♪』 鼻歌を歌いながら裏路地を出ようとして歩いていると、一人の少女が道端に横たわっているのが見えた。 『〜♪………ん?』その少女の存在に気づいたのか、 少年は歩みを止める。 『………これ、もしかして捨てられたとかか?だけど僕と年齢はそこまで変わらないような…』 少女を見つめながら少年は少し唸った。 『…とりあえず、 僕の家まで連れてくか……』 少年はそう面倒くさそうに言うと、”能力”を使って自宅まで移動した。 『まず、 着替えとか持ってくるか。』 少年はどこかの部屋に行くと、すぐさま戻ってきた。 『……っていうかどうやって起こそう?』 少年が一人唸っていると、 少女の方から目を覚ました。 『…ん。』 少女はゆっくりと目を開けて、こちらを見るやいなや、こんなことを言った。 『貴方…鈴?』 と。 『……は?』 これが、全ての、 僕の、世界が変わるキッカケだとは、僕はその時微塵も思っちゃいなかった。 そうして、物語は始まりだす。止まっていた時間が動き出すのだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加