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第四話『”初めまして”?』
唐突だが、この世界には2種類に人間が分別されている。
1つは能力を所有している人間……いわゆる能力者だ。
そしてもう片方は……能力を使えない無能力者…無能とも言われている。そんなこの世界では勿論、能力者による無能力者への虐めなどがあった。
その為無能力者達が集まる街…スラム街みたいな所が昔にはあった。
だが、ある時そんな世界を救う者が現れた。 彼は能力者にも関わらず無能力者の味方をしたのだ。更にその救世主は途轍もなく強い能力を所持していて誰も勝てなかった。 その姿は誰も見たことがない、いや、見れないのだ。 彼を倒そうと幾度も能力者がかかったが全員姿を見る前に返り討ちにあっている。
そして彼が生前に創り上げたものが非公認組織” 守るための剣” という名称らしい。 彼が創った組織は未だに無能力者の味方をし続けているとか……
『…ここが一組か……』
初めて会う人達…仲良くなれるのかという学生ならではの緊張をする。
だが好奇心も勿論ある。 気が合う人とかいるのかな…しかしいつまで経っても扉の前でウジウジしている訳にはいかない。
少し速い速度で教室の扉を開ける。 そこには見知った顔、又は知らない顔の人物達も居る。
『…本当にアレが?』
『あくまで噂だし、違う可能性もあるだろ。』
と、扉を開けた瞬間にこちらに視線が集まりざわめき始める。
少し居心地が悪かったが、そんなもの気にせずにゆっくりと席に向かい自分の席に座る。
『おはようございます。 今朝言った通り、私が学園長の妖夢です。このクラスの教師を担任することになったので、よろしくお願いしますね。』
『学園長? 学園長がこのクラスの担任をするのか…?』
少し疑問に思った。 普通学園長は学校でいう校長先生とほぼ同じ立場。その学園長が一クラスの担任をする理由はとはなんなのだろうか…
『私がこの学級を務める理由は......』
なんだろう……学園長がこのクラスだけ先生を務める理由とは…?
『特にありません!強いて言えば、このクラスは少し特殊なので…』
『いや、 特にないんだ。』
特にありません。まさかの発言には少し動揺したが、 学園長が言ってた特殊とは一 体何なのだろうか…まぁいいだろう。そんなことを考えていても意味ないだろう。
『ということで、私が担任なのは納得してください。ではこの後は…』
その後、なんやかんやあって自己紹介したり色々したり…
特に何もなく僕は放課後を迎えた。
いつも通りの帰路を歩く。やはりこの景色は感慨深い。
桜は散り始めているが、ずっと昔からその景色の輝きは変わりない。
その景色は単なる美しさだけではないどこか儚さを感じたり、落ちつくような……不思議な感覚だ。
そんな景色を眺めながら僕は帰路を辿る。
面白そうな連中がたくさんいたがこれからどうなるのか、好奇心が胸の中で膨らむのがわかった。
『まぁ…それはそれとして。』
そう呟くと少年は後ろを振り返った。
その視線の先には20人辺りの短刀や鈍器、中には拳銃も持った見るからにチンピラっぽい連中が居た。
『お前らは……何の用だ?』
『気づかれたか...奇襲を狙うつもりだったんだがな。』
そうチンピラが言い放つ。 この人数で奇襲も何もないような気もするが…
だがその人数を集めてきた労力と挑んでくる勇気は認めよう。 とそんなことを考えている僕は粋がっている様に見えるのだろうか。
『まぁ…やるならやろうぜ?こっちもさっさと済ませたいからな。』
『ふん…現代最強って言っても、それはタイマンでの話とも聞く。こんな大人数相手に一人で勝てる訳ない。しかも全員能力者だ、勝てる道理がないんだよ。』
と、正にお手本のフラグを立てていく。
まぁ、軽く捻ってやるとするか。
バッグを背中から降ろして空中に投げ捨てる。
そして連中の視線がバッグに移った次の瞬間、僕は足に力を入れ、一瞬の内に移動した瞬間、僕の足元にはさっきまで立っていたハズの能力者達が横たわっていた。
『さて、こんなもんかな。』
『な、何が……』
この光景に理解が追いついてないのだろう、男は困惑しながら唖然と言った。
『言わなくてもわかるだろ。終わりだよ。』
『そんなまさか……今の一瞬で、全員蹴散らしたとでも……!?』
『それ以外何があるんだよ、』と少年は男の方に進んでいく。
『あり得ないだろ、そんな理不尽……!』
喧嘩を売ってきたそちら側が勝手に驚かれても知ったこっちゃない。
『く、くそっ、くそっ!覚えてろよ…!これで終わると思うなよ…!』
そう言い残してチンピラはどこかに去っていった…
(『…これで何回目だろうな。』)
最近やけにこういう喧嘩を売られることが多い。
最初はまだ優しいものだったのだが……
『…おいおい…こんな物騒なものを持ち歩きやがって…ドスはまだわかるが、拳銃なんてどこで手に入れたんだ…?』
この連中はとある組織の手先だろう。 それも下っ端。雇われて今日僕に襲いかかってきたんだろうが甘い。にしても”正義の味方”さんもしつこいことだ。 ここ三年間ずっとだぞ?毎日こんなのをやっていたら肩をこる。
…まぁ察しの良い人だったら今ので分かっただろう。
そう。僕を狙っている組織の名前は”守るための剣”。 彼らは正しかった主人をなくしたせいなのだろうか、こんな風に偏った正義心を持ってしまった。
「無能力者を危険な能力者から助ける。」という思想が 「最強と言われる能力者は危険だ。」 に移り変わっていった。
行き過ぎた正義は時に人を狂わす。偽善とも言える行為であり、それは僕も理解できる。
だからこそ僕は命を狙われている。 いつ学園に被害が及ぶか分からない。 だが学園も曲者揃いの能力者集団だ。そんな簡単にやられることはないだろう。
…それにしてもまだまだあの組織は詰めが甘い。
せめて50人は引き連れてから来いと思ってしまった。
能力者が持っていたと思われる短刀を持ち上げて思いっきり手に圧力をかける…そうするとドスはみるみる潰れていった。 最終的には金属のボールみたいになった ところで踏み潰してやった。
最近はチンピラ達も本気で殺しにかかってくる勢いで、その内軍団でも引き連れてくるんじゃないだろうかと心配になる。まぁその時はその時だ。
軍隊でもなんでも敗けることはないだろう。敗ける訳にはいかないだろう。 何故なら…
『……僕は、最強だからな。』
そうバッグを持ち上げながら、僕は夕焼けにそう言った。
…実はこれ言うの恥ずかしかったっていうのは内緒だぞ。
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