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第五話『学園生活』
今の時間帯は午前8時42分…一限目が始まる前だ。この学園に入ってはや数カ月…僕はそれなりにクラスに馴染んでいたのだが……
『待ちなさぁ────────い!!!!!!!!!!!』
『こっち来んなぁヤン巫女!!!!!!!!!』
『んなっ…!?誰がヤン巫女よ!?』
『うっせぇよお前も巫女だったらもうちょっと慎ましくしろ!!!』
毎日こんな言い争いが続きその度には鬼ごっこが始まる…
『誰の料理がダークマターよ言ってみなさい!!!』
そしてこうやって追いかけ回される日々が続く。 因みにヤン巫女は僕が考えたあだ名だ。
ヤンキー巫女&ヤンデレ巫女。双方合わせてヤン巫女だ。
さて、ではこんな面倒くさくなった経緯はというと………
ー5分前ー
『ねぇ一鈴一朝食の試作ができたから試食してくれない? アンタまだ朝食食べてないでしょ?』
と、隣にいる霊夢は食器棚を漁りながらそんな事を言った。
今は寮内で二人キッチンにいた状態だった。
『うーん…いや…遠慮しとく…昨日のウォッカで大分酒回ったから二日酔いみたいだ…』
『アンタねぇ…まだ高校生なのよ?そんな度数が高い酒飲んでどうするのよ全く…』
この時は僕はまだ少し頭に霧がかかったみたいにぼーっとしていた。故にその発言に少しイラッとしてしまった。
『うっさいなぁ…………っていうか二日酔いじゃなくてもお前の試作は遠慮するわ。』
『んー……?それはどういう意味…?』
ここ辺りから少し空気が重くなったような気がしたが、それでも僕は言葉を続けた。
『だってお前が作る料理さ…80%の確率でダークマターになr…』
なんて、霊夢のことを指差しながら笑ったその瞬間。空気が異常に重くなるのを肌で感じた。 目が完全に覚めて自分がした行動を第一に悔いた。20Kgの鉄球が両肩にのしかかるような感覚だ…冷や汗が額から四粒滴った。
本能が今すぐ逃げろ。ここにいたら危険な目に合う。と耳に語りかけてくる。あくまで比喩だが。
いやそんな悠長なことを考えてる場合ではない。
ゆっくりと…ゆっくりと少しずつ後すざりしていく。これが達人の居合というものなのかと実感しつつ、扉まであと2mの所まで行った瞬間、後ろを振り返って猛ダッシュで走り出し扉をバンッと開けた廊下を駆け抜けた。
『待ちなさい!!!!!!』
彼女もすぐ廊下に出てきた。これはマズい。 彼女は相当怒っているのだが…どうしよう。
そして現在に至る訳だが……
『ふぅ…ふぅ…アイツどこに行ったのよ…見つけてとっちめてやる。』
『お一怖い怖い………っていうか何故か知らないけどよく追いかけられるんだよなぁ僕……』
廊下の曲がり角に座りながらアイツが遠ざかって行くのを視認した。
かなり面倒くさいことになってしまったような気もするが、まぁアイツはどっかに行ってしまったから良しとしよう。
それにしても…この学園の生徒達は大分個性が強いな、と毎度ながら思ってしまう。
キーンコーンカーンコーン。と、そのような音がどこからか聞こえてきた。
『おっと…授業開始5分前か………急がないとな。』
ゆっくりと身体を上げて立つと、僕はそのまま教室に向かって走り出した……
『…なんとか間に合った』
急いで教室に入って着席した。時計を確認したら現在時刻は授業開始2分前。全員ちゃんと座っていて霊夢も今教室に入って来た。
『…』
彼女はこちらを睨むように視線を向けながら自分の席へと向かって行った。『後で覚えておきなさい。』と訴えてくるかの様に感じた。
怖い怖い。放課後すぐに逃げ出さなければい けないなと考えていたら授業開始開始のチャイムが鳴った。そして先生が教室に入ってきて号令をした。
『それじゃあ授業を始めますよー。今日は能力訓練です。ですがいつもとは違ってこの学年全体で練習しますよー。その為能力練習場まで移動しましょう。』
学年全体とは…かなり大規模だな。 まぁそこはいいとして。
この学園には能力練習場という施設がある。そこで能力制御の練習をしたり訓練もしたりする。皆かなり真剣に取り組んでいるが…僕は正直そんなに興味はない。まぁとりあえず練習場へ向かうとしよう。
『到着っと。』
校内の少し遠い場所に僕達は来ていた。
『それじゃあ能力練習を始めます。 今日は誰かとペアを組んで対戦式にしましょう。他のクラスの人とも関わりを持つようにしてくださいね。』
『さて…ペアはどうするか……』
そうブツブツ呟いていたら一人の青年が声をかけてきた。
『ふむ……ねぇアンタ、対戦相手に困っていたら俺と対戦しないか?』
声がした方へ振り向いてみると、そこには黒と白が入り混じった髪の色をした短髪 の少年が立っていた。
『……そうだね、お願いするよ…で、アンタの名前は?』
コイツは、ヤバい。一目見て分かった。他の生徒達より二…いや三段も違うレベル の気配だ。こんな奴が学園内に放し飼いしてると考えたら正直怖いな。
『それじゃあ…演習開始──────!!!!!!』
と、先生が大声を開けた瞬間、 各地で一斉に対戦が始まった。
『俺の名前は... 天津歌仙だ。 それじゃあ俺たちも始めようぜ。』
そう言うと少年はどこからか槍みたいな物を取り出した。 両方の端っこに鋭利な刃が付いていた。
僕は空中に手をかざし、そこから不気味な音をたてて出現した異空間の穴から、刀を出現させた。
『…行くぞ。』
僕がそう告げた次の瞬間、 僕の剣と相手の槍がぶつかり合い、火花が散った。 互いに身体を交差させ、態勢を整えた。
そしてまたお互いの武器がぶつかり合い、 火花が散る。 この繰り返しだった。
やがて目の前の少年は一旦動きを止めて息を整え始めた。
『流石……強いなー。俺と互角で渡り合える奴なんてそうそういないんだが…』
『それはどーも。』
『だが……まだ、全然だな。お前はまだ本気を出していないだろう?』
『おいおい……こう見えて結構疲れてるんだぞ?買い被られたらたまったものじゃない。』
『どこが疲れてるだ、息すら上がっていないのに。』
『それともう一つ、気付いたことがある。』
『お前、普通の人間じゃないだろ?』
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