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第六話 『種族の血』
『お前……普通の人間ではないだろう?』
と、言われ、 僕はその場で硬直してしまった。
『しかも能力者の部類にも該当されない…種族の血というものか?』
『一体何故その力を隠しているのかわからな…』
『無駄話をしている暇があったら手を動かしたらどうだ?』
刹那、僕の右足は目の前の相手の左肩に振り下ろされていた。
『うっと…!おいおい、不意打ちは卑怯なんじゃないか?』
間一髪で左腕で止められたが、 蹴りの衝撃は多少残っていたみたいでそのまま目の前の少年は3mふっ飛ばされた。 その後すぐに態勢を整え、こちらを嘲笑うかの様に笑みを浮かばせた。
『勝手にペラペラ喋ってきたのはお前だろ…それに、今その話は必要ない』
『それも…そうだな。今の俺達の戦いには関係ない。』
そして僕達は態勢を整え、 またお互いに距離を詰めそのまま武器が衝突した。
一十分後一
『授業終了でーす。 演習を止めてくださーい!』
そう声が聞こえた瞬間、 僕達は同時に動きを止めた。
『……………もう終わりか。 もう少しだけ続けたかったんだけどな。』
『こっちも…退屈しないで済んだ、また今度、殺り合おう。』
そう言って目の前の少年は背中を向け教室に戻って行った…
『…歌仙…か。久し振りに強い奴に出会えたな…覚えておこう。』
僕はその少年に背を向けて、その場から立ち去り教室に向かうことにした。
…それから6分後、授業が始まる少し前に、僕は机にうつ伏せの状態になっていた。
『っていうかもう夏だな……暑い暑い。』
そんな独り言を呟いていると、幾度も見かけたことのある少女がこちらに向かって歩いて来て喋りかけてきた。
『どうしたのそんなにうつ伏せになって。 ほらもう授業始まるよ。』
『いやー…そんなこと言ったってさぁ……こんな真夏だぞ?そりゃあぐうだらしたくもなるだろ。』
彼女の名前はフラン。 この三ヶ月の間に出来た僕の彼女だ。 そして生徒会委員長で もある。 そういえば説明していなかったことが沢山ある。
まず委員会についてだ。 一ヶ月が過ぎた辺りに生徒会選挙があり、僕も立候補した結果、僕、小悪魔さん、ヴェルドラということになった。誰だかわからないって?それはまたいつか説明しよう。そして、先程言ったその生徒会長が現在僕と交際しているフランだ。
『っていうかさー。鈴も手芸部に来ればよかったじゃん。そういうの得意でしょ?鈴ってさ。』
『まぁ確かにそうだが…これにはケルマデック海溝より深いワケがあってだな…』
『へー……その理由は?』
『刀が僕を呼んでいた。』
『なんじゃそら。』
そんないつも通りの会話をしながら時は過ぎ…時間帯は放課後。
僕とフランは帰り道を談笑しながら歩いていた。
『そういえばさ鈴。今日先生が言ってたこと覚えてる?』
『今日………………何か言ってたか?』
『ほーらまた人の話聞いてない。あれだよ……学園旅行。』
『……へぇ?』
これはまた面白そうなことが起きる予感がするなと、この時の僕はこれから起こる事件のことなんて全く気づかずに、そんな悠長なことを考えていたのだった。
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