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第九話『楽しい楽しい学園旅行?in初日後半』
『……此処が紅魔館…いや、幻想郷か。』
と、飛行機から降りながら周囲を見た。
『…こりゃあ景色凄いな…空気も澄んでいる。』
『だろー?まぁこの館の主はちと変人なんだが。』
と、そんな話をしていると館の門から誰かが来るのがわかった。
『幻想学園の御一行様ですね、話は館主様から伺っています、門番の紅美鈴と申します。』
『本日はよろしくお願いします、私が学園長の妖夢です。』
『では荷物はこちらで預からせていただいて…………』
と、中国風の衣装を着た女性がこちらに近づいて来た後、 先生が話に行った。
『さて…と。それじゃあ幻想郷の地図を配るねー。』
そうして順番通りに彼女が地図を配り終えて僕がその地図に目を通した後、 彼女はまた喋りだした。
『それじゃあこっからは個人行動でも複数人行動でもいいので色んな所に行ってみてねー。何かあったらこのスマホに連絡すること。時間は夕方の五時に集合ね。それじゃあ解散』
そう彼女が言った瞬間、 先程まで静かにしていた一同だったが、その合図を聞いた瞬間、一斉に蜘蛛の子を散らすように様々な方角へ向かった。
『さて………と。僕は個人行動をするとしようかな…』
また面倒くさい奴等に絡まれるのは御免だ。さっさと何処かへ行くとするか…
『……ん?』
ふと、少し違和感を感じた。誰かの視線を感じたとか、何か身体の異変を感じたとかそういう訳でもない。そういえば先生がこの幻想郷には結界が張られていると聞いたが…どうにもその結界から嫌な感じがする。
…まぁ、いつもの気の所為だろう。現に今は何の問題も起きていない。
今はこの旅行を楽しむべきだ。 折角の旅行だからな。
『はーあ…………散々な目にあった……』
あの後何があったのかと言うと、あの場から立ち去ろうとした瞬間すぐさま愛奈が追いかけてきて、そしてまた走って逃げ回って人里の方まで来てやっと撒けたのである。
『って、そんなことしている内にもうこんな時間か。』
腕時計を見たら時刻は五時前。 残念そうな表情を浮かべ、トボトボと集合場所へと向かって行った。
『さて……と。皆はいるのかな……』
りんご飴を舐めながら向かってみたら、もうかなりの人数が集まっていた。
かなりざわざわしていて、 皆一通り楽しめた様子である。
『…結構ギリギリって感じだな…ん?』
はて。見覚えのある少女がこちらに向かって走って来ていているのだが…
『鈴──────!!!どこ行ってたの折角一緒に行こうとしてあげたのにさぁ!』
『そうかいそれは悪かったな。』
そう叫びながら飛びつくように向かって来る脳筋馬鹿の足首に足をひっかけ、そのまま愛奈は派手に転びその勢いのまま湖に落っこちた。
『あっやべつ。』
あまりにも気を抜いていたためなのか、それとも神の悪戯か。僕が片手に持っていたりんご飴はすっぽり手の内から抜け、そのまま世にも美しい回転を空中でしながら湖へとダイブしていった。額に手を当てる氷。青ざめる僕。呑気にも溺れかける 愛奈。そこで僕の中で、何か切れてはいけないモノがブチッと切れた。
『酷いよぉ、ビショビショになっちゃったじゃ……ん?』
『…なぁ、少しお前さぁ…最近ふざけ過ぎだよなぁ…?まぁ今更その性格を変えろって言いたいワケでもないんだよ。ただ、おふざけが過ぎる奴には…多少なりともバツが必要だよなぁ…?』
そう笑みを浮かべると、愛奈は気が動転したようにガタガタと歯を震わした。
『えっとその許し』
一分後。
『溺れっ!!溺れるっ!!!』
『その重しをつけたまま30秒間潜ってろよー。もし上がってきたら更に15秒追加だ。』
『〜〜!!』
何か水中で叫んでいるようだが、 残念ながらこちらには聞こえない。
『よし全員集まってるね…あれ?一人足りない様な…』
『キノセイダカラキニシナクテイイゾ。』
『そ、そう……?ならいいけど…』
そうして人数を数え終わった少し後に、館から誰かが出てきた。
『さて…あなた達が幻想学園の生徒ね。 私がレミリア・スカーレットよ。』
そこには、背中に黒い羽を生やした見た所10歳ぐらいの容姿の少女がいた。こんな小さい女の子がこの大きい館の主…?とも思ったが、何やら背中から羽を生やしているのを見た感じ吸血鬼か何かなのだろう。だとしたらあの見た目でも大分年をとっていても不思議ではない。
『それじゃああなた達用の部屋があるので館に御案内するわね。』
そう言いながら目の前の少女?は館の中へ行ってしまった。
『さて。私達は館内に入りましょうか。』
そう学園長の言葉を聞いて館内に入ると、 予想の倍をいく程の大きさがあった。
『うわぁ……大きい…』
『そうだな...... っていうかいつの間に出てきたんだお前。』
『皆入ってきたわね。それじゃあ二人一組になって部屋に入って頂戴。今日はそこで泊まってもらうわ。』
二人一組か…………さて、誰とペアになるべきなのだろうか。
『あ、 鈴一。私達ペアになろうよ。』
氷…か。確かに同居しているしそんな面倒事にもならなさそうだからこのペアでいいだろう。
『わかった。 そんじゃ部屋行くぞ。』
そうして僕達は、ロビーを抜けて廊下を歩いていき、一つの部屋の前に止まった。
『此処か……思った以上に広いな。』
その部屋を見回してみると、 テレビ、エアコン、ソファー、ベッド等二人用の部屋に しては豪華な内装であった。
『はぇ一大きい…………とりあえず私はお風呂入ってきちゃうね。一日中探索づくしだったし。』
『了解。んじゃ僕は此処で待ってるぞ。』
…そうして、風呂も入り終わって生徒ほぼ全員が寝静まった頃、僕は一人館の屋根の上で考え事をしていた。
『今日此処に来た時に感じた違和感はやはり間違いではないっぽいな…』
今日一日中この幻想郷を探索してみたが、やはり何か嫌な魔力を感じた。
何者かが隠れている様な、 嫌な気配だ。
『…面倒事は御免なんだけどなぁ……』
そう満月を見上げながら一人呟いていると、横から足音がしたのでそちらを振り返ってみると……
『あら、人の館の屋根で何をしているのかしら?』
『おっと………すみませんね。 少し考え事をしていたもんで。』
そこには、夕方見たこの館の領主の吸血鬼がいた。
『普通、こんな場所で考え事なんかしないと思うけど?人様の屋敷の屋根の上なんかで。』
『満月が好きなんですよ。 アレを見てると心が落ち着く。』
『ふーん、そう………』
『というかあなた、気づいていることがあるでしょう』
『…何のことでしょう?』
『しらばくっれない方がいいわよ…この幻想郷の結界についてよ。』
そう言われても、特に僕の表情が崩れることはなかった。この人物も気づいているのだろうか。いや気づいているのか、”知っている”のか。
『…さて……どうでしょうね。 貴方は何か知っているんですか?』
『いえ…私もまだよくわかってないわ。ただ、先日から少し嫌な感じがするとだけしか…』
『…そうですか…………まぁ、僕は今日は部屋に戻るとしますよ。それと、このことは先生には内密にお願いします。一応僕生徒会だから面倒なことになるんで。』
『他言はしないわ。それじゃあおやすみなさい。』
そして部屋に行くと見せかけて屋根から飛び降りた後、僕はこう呟いた。
『さて………これは面倒なことになりそうだな。』
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