帰りは牛で、ゆっくりと

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私たちが住んでいた部屋に帰ってきたけど、 ただいま、なんて言えなかった。 何も考えずに、 彼が用意してくれたキュウリに乗ってしまったけれど、 やっぱ、だめだよね。 騙されて、彼を裏切って、 私は命を落とした。 愚か。 罰があたっただけ。 そうなって当然だった。 私は、マンションのドアの前で キュウリに跨ったまま、泣く。 涙が枯れ、もうこのまま帰ろう、 そう決心した時。 ドアが開いた。 サンダルをつっかけて彼が出てくる。 そして穏やかに微笑む。 あの頃と、何も変わっていない。 おかえり。 よく帰ってきてくれたね。 私は下を向き、顔を手で覆いながら、なんとか声を絞りだす。 ただいま。 ・・・そしてごめんね。 さあ、入んなよ。 彼は、とことん優しかった。
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