刑事たち

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爽やかな秋晴れの空のもと、その山は鮮やかな紅葉に彩られていた。 標高1000メートルぐらいの緩やかな山で、ハイキングにはもってこいだ。 特に今は、吹く風が涼しく心地いい季節。 家族や恋人と楽しい休日を過ごすには、ぴったりの場所だった。 しかし…… 「はーあ、なんだって休日返上でこんなことしなきゃならないんだか」 スコップで地面の土を掘り返しながら、俺はため息をついた。 発端は6日前の月曜日。 その日、都内在住の派遣社員・上木真緒那(うえきまおな)(26)が失踪した。 職場を無断欠勤し、電話も連絡がつかない。 自宅マンションははもぬけの殻。 以上のことから、他県に住む彼女の両親に連絡が行き、その日の内に捜索願が出された。 警察の捜査により、彼女の失踪にはある男性が関わっているとされた。 梅田範人(うめだのりひと)(35)、都内在住の会社員。 彼は上木真緒那の交際相手だった。だが、彼には妻と幼い娘がいた。 つまり、上木真緒那と梅田範人は不倫関係にあったのだ。 そのことから警察は梅田範人から詳しい話を聞くことにした。 彼は、最初は知らぬ存ぜずを突き通していたが、やがて自身の犯行を認めた。 別れ話が拗れた末に、彼女の首を絞めて殺害してしまったらしい。 そして、彼女の遺体を神奈川県にある山に埋めて遺棄したとのことだった。 梅田範人がそう自白したのが昨日の夜。 そういうわけで、警察は山中に埋められた上木真緒那の遺体を捜すことになった。 警視庁捜査一課所属の刑事の一人として、俺もその作業に参加している。 というより、参加させられている。数十人の捜査員の一人だ。
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