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汗ばんだ肌からする雄々しいにおいにすら、ドキリとしてしまう。背中にまで手を伸ばして包帯を巻こうとすれば、その胸板の厚さに心臓が跳ねる。
緊張のあまり、ゴクリと喉を上下させたがその音が彼に聞かれてしまったのではないか。
だが、オリベルはされるがままだった。
「はい、オリベル団長。終わりました。こちら、新しいシャツです」
「ありがとう」
それでもオリベルは着替えにくそうだった。ラウニが手を出すと、オリベルは驚いたように目を見開いた。
「オリベル団長。一人でできないときは、私を頼ってください。私だって、事務官なんですから」
「だが、事務官の仕事に俺の着替えの手伝いは入っていないだろう?」
「そう……かもしれないですけど? ですが、今さらですよね」
他の事務官も、ラウニがオリベルを起こして、身支度を整えさせ、朝ご飯を食べさせ、仕事をさせているというのを知っている。
むしろ、あのオリベルを扱いこなせるのはラウニしかいないのでは? と言われているくらいだ。
ただでさえ、他の事務官たちは近づきたくない第五騎士団。
そのなかでも、ラウニだけはどの騎士団に対しても平等に接していた。と、周囲からはそう見えるのだ。
ラウニにとっては第五騎士団が贔屓の騎士団なのだが、他の事務官がまったく第五騎士団を気にとめないため、ラウニが贔屓して平等になるという扱いを受けている。
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