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ラウニが呟くとオリベルは嬉しそうに笑った。
『そうだろう? オレの自慢の弟だ』
不思議なことにオリベルに抱っこされた赤ん坊は、すやすやと寝息を立てていた。そして血の繋がりのない兄弟を見守っていたのも会長夫妻だった。
ラウニの父親も会長夫妻を気に入ったようで、ニッカネ商会に商品を卸すようになったのはこれがきっかけだった。
さらにラウニがオリベルを意識するようになったのも、このときからだ。
彼が騎士団に入団したと聞いたとき、事務官となれば側にいられるのでは? と思った。
だけどまだ、この気持ちをオリベルに伝えることができない。
拒まれるのが怖いから。
だからまだ、このままの関係を続けていきたい。
**~*~*~*
燃えるように熱くて痛かった身体が、今はすっかりともとに戻っている。
どこにいるのかと思って頭を振れば、額からはらりと濡れた手巾が落ちた。
(ラウニ……)
オリベルのベッドに顔を伏せて、眠っている彼女の姿が見えた。
(夢ではなかったのか……)
昼前、女性の叫び声が聞こえ、すぐさまそこへと駆けつけてみたところ、身体中、毛に覆われた大きな魔獣が、女性二人に襲い掛かろうとしていた。
洗濯物を手にしている彼女たちは、洗濯メイドの一人と、ラウニだった。ラウニは着替えの補充のために、そこへ足を運んでいたのだろう。
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