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オリベルは迷うことなく、魔獣へ向かって走り出し、剣を向けた。魔獣の牙がラウニを狙った瞬間、その間に身体を滑り込ませた。
『……うっ』
魔獣の牙はオリベルの肩をかすめた。だが、これで魔獣の動きは封じられた。右手に持っていた剣で魔獣の首を狙う。
視界に入ったガイルに、彼女たちを安全な場所へと連れていくよう、視線で訴える。頷いたガイルにすべてをまかせ、オリベルは目の前の魔獣を倒すことに専念する。
他の騎士たちも駆けつけ、なんとか魔獣を倒すことができたのだが、魔獣をここまで侵入させてしまった事実に胸が痛まないわけがない。
すぐに対策会議が始まり、取り急ぎは見回りの強化となった。将来的には、外壁をもう少し高くするか、その外壁の上に割れたガラスや釘などを敷いて、よじ登れないようにする案も出された。これは予算と工数の兼ね合いから、もう少し検討する必要がある。
その会議を終え、執務室に戻ってきたところで、身体に異変を感じた。
ドクンと心臓が強く震え、熱い血液を流し始める。そうなれば、身体中が熱くて痛くて、寝台に辿り着くだけで精いっぱいだった。
そこで痛みを逃すように、耐えていた。
『……オリベル団長!』
都合のよい夢だと思っていた。
想いを寄せているラウニが、看病に来てくれるだなんて。
着替えさせられ、身体を拭いてもらい、薬も飲ませてもらって、眠りにつく。
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